フィフティ ファゾムスが大豊作

ブランパンの傑作時計の一つに、ダイバーズウォッチの「フィフティ ファゾムス」がある。ファゾムスというのは水深を計る単位の事らしく、両腕をいっぱいに伸ばした長さだという。イギリスのファゾムスは6フィート、およそ1.8メートルを表すが、ドイツなどでは微妙に長さが異なるから不思議だ。
そして日本にも同じような深さを計るのに用いられる単位があり、こちらは尋(ひろ)というのだが、世界のどこにでも、このような単位があるのが面白い。それだけ人間は海や川から食料や装飾品の素材を得てきたから、深さを表す単位は重要な役割を果たしてきたのだろう。
さて今年のブランパンは様々なタイプのフィフティ ファゾムスを発表したが、中でもそのケースの作り込みなどがすごいと思わせてくれたのが、1953年、オリジナルのフィフティ ファゾムスを発表した際にコラボレーションをした、フランス海軍の特殊潜水部隊へのトリビュートとして発表された”フロッグマン”限定モデル(Ref.5015E 1130 B52A)だった。


このモデルにはその裏蓋に、錨の前で二匹の有翼のヒッポカンポス(=タツノオトシゴ)が向かい合う、フランス海軍特殊潜水部隊の紋章が浮き彫りされていて、フィフティ ファゾムスの輝かしい歴史を物語っているのである。
そして角度によって見え隠れする「7」という数字が、文字盤の6時位置にシークレットサインのように描かれているのだが、この7という数字は、純酸素による潜水の限界が、水深7メートルであることを意味している。それはダイバーにとっての象徴的な数字なのだそうだ。
このモデルのほかには、チタニウム素材のケースをブラッシュ仕上げしたもの(Ref.5015 12B30 B52A)や、レッドゴールドケースにセラミック素材の文字盤を持つモデル(Ref.5015 3603C 63B)、西ドイツ海軍に納入されていた時代に、ドイツ国内で人気を博した市販モデルを復刻した限定の「バラクーダ」(Ref.5008B 1130 B52A)など、今年のブランパンはまさにフィフティ ファゾムス・イヤーといっていいくらい、充実したバラエティを展開している。