テスラは完全自動運転?
最近なにかと話題の自動運転だが、ひとくちに”自動運転”といってもそこで実現できる機能は実に様々。さらにいえば、厳密な意味で”自動運転”と呼べるものはいまだに商品化されていないのが現状である。
「でも、ウチにあるテスラはドライバーがなにもしなくても自動で走り続けるよ。あれは自動運転じゃないの?」とアナタは訊ねるかもしれない。なるほど、テスラのウェブサイトを見ると「完全自動運転対応ハードウェア」と謳っているが、「完全自動運転を行っている」とは言っていない。なぜなら「将来的な完全自動運転に対応するハードウェア」は装備しているが、現状では「完全自動運転を実現していない」からだ。
なぜ、完全自動運転は実用化されていないのか? 理由は大きく分けてふたつある。完全運転に必要な技術が未完成であることがひとつめの理由。そしてもうひとつは、完全自動運転で路上を走ることがまだ法律で認められていないことが、理由のふたつめである。
実は、どこまでなにをすれば本当に安全な”完全自動運転”が実現できるのか、まだ誰にもわかっていないのが実情である。自動運転技術に取り組むある企業は、路上で起こりうるすべての状況をコンピューター上で再現するため、ありとあらゆるシーンを洗い出そうとしているが、同じことを路上で行おうとすれば20億kmも走行する必要があるらしい。しかも、20億km走って得たデータのひとつひとつについて、「どういう操作が正しいか?」を判定する基準もまだ明確になっていないという。つまり、完全自動運転への道は始まったばかり。いや、まだスタート地点にさえついていないともいえるのだ。

そんな状況だから、どの国も完全自動運転に関する法律を制定できないでいる。完全自動運転するクルマが製品化されていないのは、したがって当然のことだ。

では、「自動運転に似た機能」として現在、販売されている装備(たとえば日産のプロパイロットやスバルのアイサイト/ツーリングアシスト)とは、どのようなものなのか?
それらはいずれも安全運転支援システムと呼ばれている。つまり、クルマが自動的に運転する機能ではなく、運転手である人間の操作を助けるための機能なのだ。
だから、冒頭で述べたBMWのデモカーとは異なり、ドライバーが運転席に腰掛けていなければいけないし、ドライバーが意識を集中して運転操作を続けていなければいけない。間違ってもよそ見してはいけないのが、現在の安全運転支援システムなのだ。
では、この種の技術は今後、どのように発展することが期待されているのか? 次回はそれについて紹介することにしよう。
文・写真/大谷達也 編集/iconic
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