

これらの印象は、同じく180ps仕様で8速ATが組み合わされ、よりフロント荷重のどっしりした2LディーゼルのBlueHDi180に乗り換えても変わらない。ただ給油時に、高速道路ならリッター20km弱をコンスタントに叩き出すディーゼル仕様の方が、燃費でも長距離巡航でも優位にあることは確かだ。逆に街中での軽快さと滑らかな乗り心地は、ガソリン仕様の方が際立っていた。乗り手の用途によって得意とする分野をパワートレインごとに、はっきり棲み分けている。

だがPHCの本領が発揮されるのは、やはり峠越えのようなワインディングだろう。柔らかい足回りだがストロークが深まるほどロール速度は抑えられ、ステアリング操舵に対する剛性感や接地感が途切れない。結果、コーナーの連続する山道で操るC5エアクロスは、想像以上にスポ—ティだ。全長4500mm×全幅1850mm×全高1710mmと、決してコンパクトではない体躯にも関わらず、それを忘れさせる身のこなしを見せる。加速の伸びやパンチ力はディーゼルが優るが、軽快さではガソリン仕様が一枚上手といったところだ。

加えてC5エアクロスの特長は、ドライバーだけに独り占めされる類のものではない。2列目シートの3座が各々、前後150mmもスライド可能で、別々にリクラインも折り畳みも効く。後席の乗員が快適に過ごせることはもちろん、荷室容量だけでなく積むモノに応じて荷室のカタチも自在に調整できる、そんなモジュール性の高さを備えている。要はファミリーカーとしてミニバンを敢えて選ばずとも、必要要件を十分に満たせるクルマだ。
外装に施された蛍光色のアクセントは確かにダサ・カッコいい路線で目立つこと請け合い。だが、デザイン・オリエンテッドかつ流行りのコンパクトSUVというだけの一台でないことは確かだ。
文/南陽一浩 写真/望月浩彦 編集/iconic