

試乗当日の天候は雨、しかも公道走行なのでとてもじゃないがその実力を試すことは不可能だった。それでも電気自動車の特性としてアクセルを踏んだその瞬間にトルクが立ち上がりシートに背中が張り付く。電子制御でフロントとリアのホイールそれぞれに、効率よくトルクを伝達してくれるため少々濡れた路面でも不安なく走ることができる。ジャガーiペイスやアウディe-tronにもすでに試乗したけれど、ことスタートダッシュの速さでいえば、モデルSに軍配があがる。

強い雨が降っていたこともあり、自分での運転はそこそこに、オートパイロット機能を試す。こちらも件のアップデートによって、車線検知能力の精度があがっているようにも感じた。雨の中でもしっかりと車線を認識してセンターを維持し、ステアリング操作をアシストしながら不安なく走行できる。車線変更もウインカーを出せば安全を確認した上で自動で行ってくれる。またインテリアの中央に鎮座する17インチタッチスクリーンもレスポンスがあがり、使い勝手が向上した。地図やメディアの操作をはじめ、キャビンコントロール、細かな車両の設定やガラス製パノラミックルーフの開閉などまで統合制御されている。
今年はジャガーiペイスを皮切りに、アウディe-tron、メルセデスEQCなど、日本市場ではテスラの寡占状態だったプレミアムEVマーケットに新型車が続々と登場する予定だ。迎えうつテスラは、BMWi3が苦戦する500?700万円の価格帯に「モデル3」を導入。さらに、2020年にはそのモデル3をベースとしたSUV「モデルY」を投入すると発表している。2018年の世界販売台数をみるとテスラは約25万台。実はこれほぼポルシェと並ぶ数字であり、もはや新興メーカーとはいえないレベルにまで成長を遂げている。さらに2019年中には中国の新工場でもモデル3の生産を開始する予定で、2019年通年の販売台数は36万〜40万台を見越しているという。テスラはどこまで躍進し、モデルSはどこまでアップデートし続けられるのか、大いに楽しみだ。
文/藤野太一 撮影/柳田由人 編集/iconic