説明のうまさが聞き手を引き込む
カンタータのデザイナーとして活躍中の松島 紳さんの印象を形容するなら、理路整然と言う言葉がぴったりではないだろうか。質問をしても「うーん……」、「そうですねぇ……」なんて迷いは皆無。テキパキと言葉が返ってくるのに驚いた。また、非常に話し上手でもあり、説得力のある説明にどんどんと引き込まれてしまう。なにもかもが頭の中で整理されている様子が伝わってきた。
子どもの頃の様子を聞いて、彼のスマートな返答にも納得がいった。
「パソコンでも洗濯機でも、なんでも使う前に説明書をすべて読んでいました。自分に関係のない製品の説明書であっても読むんです。子どもの頃は機械を分解するのが好きで、電卓の液晶がどんな仕組みで動くのかが気になって分解したこともありましたよ」。

今も昔も気になったことには、とことんのめり込む性格。関心を持つと、徹底的に調べ上げ、一晩で誰よりも詳しくなるほど集中してしまう。現在は食べものに関心が高く、食材の旬に興味があるそうだ。といっても、大根=冬といった単純なものではない。松島さんが例に挙げたのがマグロ。おいしいことで知られるのは大間(津軽海峡)のマグロだが、マグロは当然ながら回遊をするものである。ただ大間のマグロが良質という理解ではなく、回遊のタイミングと水揚げされる場所ごとの風味の違いを細かく把握して、深く理解しようとしているとのこと。徹底的に物事を追求する姿勢には、驚くばかりだ。
ほかに陶芸にも魅かれている松島さんは、美術評論家・青山二郎を例に、次のように語る。
「陶磁・白磁の価値を見出した人物が青山二郎です。美術品は価値を見出さなくては意味がありません。そういう目利きの出来る人になりたい。もともとモノが好きなので、知らないことに出会うとうれしくなります」。
