歌い継がれる名曲【ロングインタビュー】作詞家・松山猛とその時代#8 最終回

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『BAKEの皮』誕生秘話

——松山さんが最近お書きになった詞に、僭越ながら不肖まつあみが曲をつけさせて頂いたナンバー『BAKEの皮』、あれも社会に対する鋭い視点というか、やっぱり反骨精神が生きてる詞だと思いました。あの曲のコンセプトは、いつ頃から温めていたんですか?

松山 化けの皮が剥がれるところを見てみたいなっていう気持ちがずっとあってね。あれで全部が書けてるわけじゃないんだけど、世の中の化けの皮が剥がれてほしいなという気持ちです。

『BAKEの皮』

作詞:松山 猛 作曲:まつあみ 靖

BAKEの実が成っている
かぐわしい香りたてて誘ってる
憂いを溶かすその香り
人は己を見失う

BAKEの実は癖になる
一度でも口にすれば止められず
心を惑わすその味に
人は全てを見失う

BAKEの種は黄金さ
望みを叶えるイージー・ウエイ
世界を狂わすその種に
人は正義を見失う

BAKEの畑は腐ってる
騙された人の涙、撒き散らし
嘘と裏切り栄養に
BAKEは育てられるのさ

BAKEの威力は深刻だ
空気も水も汚されて
世界は地獄となりはてて
人は棲家を見失う

化けの皮、化けの皮、化けの皮
危険だぞ、危険だぞ、危険だぞ
それ以上剥くな、剥くな、化けの皮
化けの皮の中身とは、お前を飲み込む暗黒だ

>> iTunesで試聴する

——イメージとしては、原発だったり?

松山 原発だったり、政治だったり、化けの皮剥がれても居直る政治家がいたり。

——剥げても悪びれないっていう。

松山 悪びれないんだよ。そこが恐ろしいんだよ、今の時代。やったもん勝ちのつもりでいるから。

——『BAKEの皮』は、どのくらい前から構想があったんでしょうか、やっぱり3.11後ぐらいですか?

松山 そうだね。やっぱり原発。原発に対しては、すごい前から批判的だったっていうか。これは言っていいのかどうか分かんないけど、某広告代理店から一度「原発の広告出ませんか」みたいな、おいしいお話があったんだけど、断りました。

——反骨ですよね。

松山 うん。それやっちゃったら言いたいこと言えなくなっちゃう。あんだけのことが起きたのに。僕らの時代が、それを許しちゃったわけだからね。旗揚げて、デモして、どうのこうのってやったって、原発をつくることを止められなかったかもしれないけど、でも反省しないと駄目じゃん。しかも、まだ40ヶ所近くも残ってるわけだから。

——おっしゃる通りです。

松山 陰謀論にはくみしたくないけど、でもなんで自民党が1回敗れて民主党政権だったときに、あの地震が起きたんだろう、とは思ってしまうけどね。結局、あれで化けの皮が剥がれたけどね、民主党もね。自民党も化けの皮が剥がれたけど、そこから違う体制になることを嫌がった人たちがいたっていうことなのかな。いずれにしても、こんな時代を望んでなかったですよ。

——もっと世の中に対して、曲を作って何か言っていこうという気持ちはお持ちじゃないですか?

松山 遺言ってこと?(笑)

——何をおっしゃいますやら、遺言じゃないですよ(笑)。

松山 自分自身が、若いときのように新しい音楽に積極的にアクセスしなくなってる。さっきも言ったけど、脳みそがみずみずしくないと(笑)。でも最近の音楽って、なんか仕掛けもんばっかじゃん。コマーシャルとか、ドラマの主題歌とか、何かとひっついてコラボしてとかね。じゃないと売れないんだもんね。そういう紐が付かないで、単体ですごい人ってあんまり出てきてないような気がする。音楽にとっては不幸な時代なのかもね。僕たちの時代が良かったってわけじゃないけど、オーディエンスももっとちゃんと時代に沿った動きがよく見えてたような気がするね。

最近ね、古いパソコンから、昔書き溜めてた歌詞を少し発掘できたんですよ。それに、また命を吹き込んでみるのも悪くないかもしれないね(笑)。

作詞家・松山猛
松山 猛(まつやま たけし)
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。
MEN’S EX ONLINEで「道楽道」を連載中。

<完>

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撮影/稲田美嗣(人物)、まつあみ 靖(静物) 文/まつあみ 靖

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