学校では教えてくれない念珠の世界を知る

そもそも、「伝統工芸」と聴くと、敷居が高いと感じる方もいらっしゃるでしょう。京都の路地裏をめぐるとそこかしこに伝統工芸を生業とする店を見つけることができますが、その扉を開くには一見さんだと勇気が要るかもしれません。でも、今回、「ENSO ANGO」の<京職人トーク>とうアクティビティに参加したことで一気に親近感が湧きました。
このプログラムは、まず、ホテル内の”タタミサロン”と呼ばれる和室にて職人の方からミニ講話を聴くことから始まります。そして、その後に講師である職人さんに案内されて実際の店舗を訪ねます。
私が体験したのは、1764年創業の京念珠店「中野伊助」の十代目当主による「京職人トーク」。年齢的に法事や葬儀に参列する機会が増えてきていますが、私は恥ずかしながらきちんとした念珠(珠数)を持っておらず、また、知識もなくて、買い求める一歩をなかなか踏み出せずにいました。でも、いざというときに慌てないのも大人の嗜みですし、まあ、そんなわけで、前のめり気味でミニ講話に耳を傾けました。
なんとなく想像はしていたのですが、念珠って宗派によって仕立て方が異なるんですよね。また、正式な珠数は煩悩を表す108の珠でつくられていること、珠数によっては最大6万4800まで数を数えられることもわかりました。また、珠の材質も多種多様で、香木を削ったものから、水晶やメノウなどの玉石類も使われるそうです。

15分程度のミニ講話を聴いた後は、職人さんと一緒にホテルを出て、実際の店舗へ。この10分程度のブラブラ歩きがとてもいいのです。長年京都に暮らしていらっしゃる方ならではの目線で、地域のことを教えてくださるので、ガイドブックには載っていない”本当の京都”を発見できたりするんですね。
お店に着いたら、職人の方の実演を拝見し、そして実際に念珠づくりの最終工程にあたる房付けを体験。出来上がりはそのままお土産として頂戴しました。


念珠がぐっと身近に感じられて、職人さんとも親しくなれる。1時間程度のアクティビティでしたが、店を出て解散したあと、京都の町の風景が今までより新鮮に目に映りました。知らないことを知る歓びを噛みしめられたからかもしれません。ちなみに、今度、京都を訪ねる際は個人的にお店を訪問し、一生ものの念珠をオーダーメイドで作ってみようと思っています。
ホテルのアクティビティを通して、京都の街をより深く知る。その目線で宿を選ぶのもひとつの方法。ご興味がある方は、ぜひチェックしてみてください。
ENSO ANGO 麩屋町通Ⅱ
住所:京都府京都市下京区麩屋町高辻上る鍋屋町241-1
TEL:075-585-5790(予約)
ENSO ANGO公式サイト
中野伊助
住所:京都府京都市下京区寺町高辻下ル京極町505
TEL:075-351-0155
営業時間/9時〜18時 日・祝・第二土曜休
中野伊助公式サイト
関連記事: 一度は泊まりたい”一芸宿” #12 京の文化体験【京都市下京区 | ENSO ANGO】
取材・文/甘利美緒