ツウ好みのウイスキー「グレンモーレンジィ」の最高蒸留・製造責任者に聞いた!  希少な限定品「アルタ」誕生の秘密とは?

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M.E. 長年のリサーチのなかで発見されたことはありますか?

ビル博士 いろいろな木材を試してきましたが、やはりオークは特別な存在と考えるようになりました。この間、他国のウイスキー蒸留所にて樽自体はオークでありながら、鏡板に杉材を用いた樽に保存した原酒をテイスティングする機会がありました。実にユニークな発想でしたが、これは少々ユニーク過ぎ(笑)。その他、ブラジル産チェリー材にもトライしましたが、思うような結果は出ませんでした。オーク樽の方がより甘味も強くなり、ソフトに仕上がるのです。ただしオーク材にも色々な産地が存在します。そういった種類をこれからは、ひとつずつ研究していこうと考えています。

M.E. 最新のプライベートエディション「アルタ」の製造には、何か特別なきっかけはあったのでしょうか?

ビル博士 今回のアルタは、私が学生時代に博士号を取得した酵母の研究がひとつのベースとなっています。ウイスキー作りにおいて酵母は重要でありながら、当然のモノゆえに注目されてこなかった分野。また著名なウイスキー評論家であるマイケル・ジャクソン氏との出会いも、重要な切っ掛けとなっています。氏の著書のなかに「グレンモーレンジィの特別性は、ある固有の酵母に由来する」と記した一文があり、そこから発想を得たのです。蒸留所に戻りグレンモーレンジィに関する酵母の記録を調べたのですが、データはまったく皆無。そこで私は自らオリジナルの酵母を作ろうと考えるようになったのです。注目したのは野性の酵母。グレンモーレンジィの蒸留所近辺に自生する、野性のイーストをいろいろとリサーチしました。なかでも自社で所有する大麦畑に生える麦の穂に自生する酵母は、理想の存在。これを利用してアルタは完成に至ったのです。

M.E. アルタが特別なプライベートエディションとして選ばれたポイントは何でしょうか?

ビル博士 実はアルタに使用した酵母は、定番の酵母よりも発酵効率が低いのです。10〜15%ほど低い発酵率ではありますが、従来の酵母にはない力強い味わいを生み出すことが分かりました。定番商品のグレンモーレンジィと比べるとフルーティさはやや控えめとなりますが、フローラル、アーシーな要素、それにスパイシーさにおいて強いエッセンスがあるのです。定番商品と単純に比較できるものではありませんが、グレンモーレンジィの新たな境地となったことは確実。また、新種の酵母にて醸造した、グレンモーレンジィ史上初のウイスキーであるところも見逃せません。

M.E. このグレンモーレンジィ初となる歴史的な限定ウイスキー。博士はどのように楽しむことを提案されますか?

ビル博士 もちろん飲み方は自由です。ただし私なら、定番商品のグレンモーレンジィや他のシングルモルトなどと比較しつつ味わうことをお奨めします。丸みのあるビスケットの風味や多様な花の香り、それに柑橘をかじったような爽やかな味わいが渾然一体となったアルタは、必ず心の奥に響くウイスキーだと自信を持っています。

M.E. それは本当に楽しみですね。今日は本当に有り難うございました。

2025

VOL.345

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