ボタン位置と着丈を重視すべし
さらに続く、やりとりで次にキーとなったのがラペル。今回のジャケットはラペル幅がもっとも広く、ゴージの位置も鎖骨にあたるくらいの一番高い位置に設定される。
「これならトレンドから外れないし、長谷川さんの好みにあうでしょう」と齋藤さん。
そしてボタンは1ボタンで位置は低め、裾の位置は通常よりも2cmくらい長めで腰からカッタウェイで左右に美しい広がりを見せるイメージに。
齋藤「カッタウェイにしなければ、オーダーサンプルの着丈でいいけれど、今回はアレンジしましょう。ボタン位置と着丈はデリケートに扱うべきポイントです」

初心者のオーダーメイドでは、注文をつけすぎて、仕上がったときに全体の調和がとれていないケースが少なくない。その点、長谷川さんは、自分の好みを理解している齋藤さんを信頼し、上記のボタン位置や着丈やシルエットなどは提案を受け入れているのが印象的だった。そして、今回は長谷川さんが齋藤さんに寄せる信頼が、よい結果につながるであろうことも見てとれる。
胸と腰のポケット選びも、英国らしく
まだまだディテールの相談は終わらない。今度は胸ポケットの仕様のチョイスだ。クラシコイタリアブームの頃から、ポケット口をカーブさせて片端を上方に持ち上げた「バルカポケット」がイタリア的な装いでは注目されてきた。一方、伝統的な英国のポケットは丸みのない箱型が主流。
長谷川「どっちが似合いますか?」
齋藤「イタリアンの場合は箱型にすると、ふくよかな印象が崩れます。しかし、今回はツイードを使うので、もともと柔らかい印象ではありません。ここは、いさぎよく箱型でキメるのがいいと思いますよ。あとは腰のポケット。より英国的なのはスラントポケットです」
スラントポケットとは、左右のポケットが正面から見ると八の字型に傾斜させた仕様を指す。
