2019春夏新作の「印象に残る、ニュートラルな色使い」とは——?

ピッティ会場で、2019年春夏のコレクションについてアントニオ・サンタニエッロ氏に尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「洋服のすべては素材や生地から始まります。しかしもっと遡れば、それは”色”につながるんだと思います。そのイメージは、自分が小さい頃、飴やキャラメルをしまっていた古いブリキ箱の思い出に似ていて、どこか色褪せていて、霞の中にぼんやりとあるような、”物体”としてではない曖昧なもの。またそうした色は、水彩絵の具を溶かしたとき、一色にとどまることなく、色褪せたり、重なったりして美しく変化していく感じにも似ています。そんな色調の美しさを、服で表現したいと思いました」



上の写真のように、会場で発表された新作ジャケットやパンツたちは、自然の色合いが絵の具のカラーパレットのように、美しいグラデーションを描いていたのが印象的だった。
「ニュートラルで裸の状態の繊維や生地が、透明感があり、滑らかな水彩絵の具で染められていったら、どうなっていくでしょう? ニュートラルな色には、淡さ、明るさ、汚れのないナチュラルさがあります。これらのニュートラルな生地は、異なる素材をブレンドしたり、二度染めしたり、洗いをかけたり、プリントをのせたりしていくことで、空の雲、水面に映る花、早朝の澄んだ空、陽射しのイエロー、大地の土……というように、透明感がありながら、不均一な美しさを纏っていくのです。」
透明感ある、サンタニエッロの色、生地へのこだわり(写真4枚)

「今季は、ソラーロにも注目しています。ソラーロというファブリックは、自然な印象があるので、その他のナチュラルな色と合わせても、非常に温かみある印象を作ることができます。錆のような深みのある土の色や、インクブルーのような美しい色を作りたいと思い、長年研究を重ねてきた生地のアーカイブを参考にしながら、これだ!と思う色を作りだすことが出来ました。」