時代に合わせて進化を続ける「マスターピース」の現在形

「定番」「名作」「傑作」と呼ばれる、ブランドのアイコン的モデルがある。
時代やトレンドに合わせて新モデルがどんどん登場する中で、変わらずに生き残っているもの。それらは、誕生したときから完成形だから、いつの時代も服にこだわるメンズのワードローブに欠かせないのだと思う。そんなマスターピースも、伝統の形を守りながら、少しずつモダンに、より機能的に、装いの幅を広げて、進化していたのが興味深かった。
たとえば、エドワード グリーンの「チェルシー」は正統派ドレス靴の筆頭だが、これにオイルなめし&型押しを施した独特な表情の「ユタカーフ」を載せると、一気にカジュアルにも行ける顔になる。先に紹介してきたように、英国的なスーツでも少しリラックス感があったりスポーティ感があるコーディネートが増えたり、またコーデュロイといった遊びのあるジャケットが増えたりしているから、ドレスの着こなし幅がどんどん広がる今の時代、「少しカジュアル感が加わった英国靴」は絶妙に履きやすいのではないかと思う。
名靴「チェルシー」×「ユタカーフ」が新鮮!(写真2枚)
名優スティーブ・マックイーンも愛用したことで大人気となったモーターサイクルジャケットの傑作、ベルスタッフの「ロードマスター」は、4ポケット&ベルト付きのお馴染みの形はそのままに、内側の構造でものすごい進化を遂げた。人間の身体を温めるのに最適な背中と前身頃と袖の一部にダウンを搭載、ジャケットの上に羽織ったときの可動域を十分に確保するため、背骨、脇、そして肘回り部分はあえてダウンを抜いている。こうした着用時の快適性を確実に考慮した構造だから、バイクに乗る時だけでなく、ヘヴィウェイトのスーツの上にもローゲージのセーターの上にも着られる、シティユース版傑作になったというわけだ。
2018年版「ロードマスター」は内側に秘密アリ!(写真4枚)
その他、ブルゾンの名作「バルスター」に転写プリントが施されたり、サンダルの傑作ビルケンシュトックの「アリゾナ」もバックルサイズに絶妙な「今っぽさ」が加わったりと、個々の王道ブランドの現代版が随所に見られたのはとても新鮮だった。
「型を守り、型を壊す」ことは意外と難しいようで、歴史あるブランドだからこそ、そこに踏み込む勇気があって、進化を続けられるのかもしれない。
撮影・文/平澤香苗(MEN’S EX ONLINE)