

ユリス・ナルダン
フリーク ビジョン
ユニークな視点で、独特の時計を作るユリス・ナルダンからは、新しいイメージのデザインとなった「フリーク」が登場した。「フリーク ビジョン」と名付けられたこの時計、分針のそのものがムーブメントになっているというコンセプトは、2001年のオリジナルそのままだが、未来的なデザインを得て、さらに興味をそそるものとなったのだ。
この針型ムーブメントは、分針として時計の中を一時間に一周しながら、重力の片寄りをキャンセルする、いわゆるカルーセル機構である。そしてシリシウムによる、脱進機はとても未来的なデザインとなっていて、この時計を比類なき物としている。
これまでのフリークは、手巻きだったが、今回初めて自動巻き化したこのモデルに採用された巻き上げ機構は、グラインダー・システムと呼ばれる新しく開発された珍しいもので、腕に着けた時計のわずかな揺れをも感知し、確実にゼンマイを巻き上げるという優れたものだという。時間合わせは従来通り、ベゼルを回転させる方式だが、プラチナ素材のクールなデザインは、さらに前衛的なイメージを感じさせてくれる。
それにしても、時計の製造方法を革命的に変えた新素材シリシウムの可能性を、誰より信じ、いち早く自社の時計に取り入れたブランド中興の祖、ロルフ・シュニーダー氏の慧眼には、いまさらながら驚くばかりだ。それあっての時計こそが、このフリークだからである。
さらにディテールをチェック!(写真8枚)
このほか、1000m防水という、とてつもないスペックを持つダイバーズウォッチの「ダイバー ディープ ダイブ」も発表された。
チタン素材のケースは、水中で手袋をしていても操作しやすいように、角張ったベゼルを採用している。不意の衝撃から護るため、2時位置にリュウズを配置し、それを頑丈なガードピースでプロテクトしている。リュウズの位置を少しずらしたため、スモールセコンドも右に偏芯したが、それがデザイン上のアクセントとなっていて面白いと思った。
Profile
松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。SIHHは初回から欠かさず取材を重ね、今年で28回目。
撮影/岸田克法 文/松山 猛