SIHH 2018 DAY 1

SIHH初登場となったエルメスの”新しい風”
今年の時計界のビッグニュースのひとつが、パリのメゾン、エルメスがバーゼルを後にし、1月のジュネーブの、SIHHに参加することになったということだろう。
新しくなった会場エントランスからすぐのところに、エルメスらしいデザインが施されたブースが作られていて、SIHHに新しい風を吹き込んでいるような気がした。

木で作られたさまざまでカラフルなディスプレイは、その多くが可動式になっていて、ちょっと”ピタゴラスイッチ”的で面白い。
ブース内のデザインを手がけたのは、ドゥニ・モンテルという建築家で、このウィンドウを含めたインスタレーションはオランダ人のアーティスト、レヴィ・ファン・ヴェルーによる。
とても暖かみのある雰囲気に、エルメスらしい心づかいが感じられるものだ。
さて、そのエルメスの新作時計は「カレ アッシュ」と呼ばれる正方形の文字盤を持つ、視認性の良さを追求した時計だ。この時計は2010年に建築家、デザイナーとして活躍するマルク・ベルティエによるデザインで発表され、今年それを新たにリファインし、ブラックやグレーの文字盤に、アラビア数字のフルインデックス時計として再デビューを果たしたというわけだ。
通常のインデックスは1時を1と表現するが、この時計は1時から9時までを、01、02・・・とあらわしているところがユニーク。またファセット加工された針や、ポリッシュやブラスト加工されたケースなどが、光を微妙に反射させる効果を持つ物である。
そして1978年にオリジナルを持つ「アルソー」コレクションからは、チタン素材ケースのクロノグラフ「アルソー クロノ チタン」が登場した。
このアルソーというモデルは、文字盤のアラビア数字が斜めになっていて、ひと目でほかの時計とは異なる雰囲気を持つ物だ。30分積算計や12時間積算計の数字も、同じように斜体がかかっているのが何とも楽しい。
また限定3本のスペシャルなピースとして、フライングトゥールビヨンモデルである、「アルソー リフト ミルフィオリ」が作られた。この時計の文字盤は、フランスのクリスタルメゾンである、サンルイ社が手掛けたミルフィオリ技法によるもので、モノクロームで控えめでありながら、気品のある時計デザインとして完成させているところは、さすがのエルメスであると感心させられた。


Profile
松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。SIHHは初回から欠かさず取材を重ね、今年で28回目。
撮影/岸田克法 文/松山 猛