
時計王・松山 猛の前口上
新年の挨拶はジュネーブサロンから始まる
2018年1月15日から、今年もジュネーブのパレクスポを会場に、高級時計の祭典「サロン・インターナショナル・オート・オロジェリー(SIHH[=Salon International de la Haute Horlogerie Geneve]、通称ジュネーブサロン)」が開かれた。

それに先立つ14日の夜には、サロン主催のウェルカム・パーティが催された。そこにはリシュモン・グループの各ブランドや、独立系の出展ブランドのCEOをはじめとしたスタッフ、そして世界各国から取材に訪れたジャーナリストが一堂に会し、時計の新年というべき日々を祝い、オイスターやフォアグラなどの美食を肴に、シャンパンやワインを片手に、旧交を温める時間を楽しんだのだった。
また同じ夜にレマン湖に浮かぶ、大型のボートでは、LVMHのウブロやゼニス、タグ・ホイヤーなどが、ウェルカム・パーティを催し、ジュネーブは新作時計でにぎわう一週間を迎えるのだった。
2018年はどんな新作時計に出会えるだろう?
今年、我々世界文化社チーム(時計Begin、MEN’S EX、そしてMEN’S EX ONLINE)が選んだ宿泊先は、スイス国鉄のジュネーブ中央駅コルナバンに面した、とてもロケーションに恵まれた宿で、サロンへのシャトルバスへのアクセスも良い。
1月のスイスの朝は、なかなか明けず、窓の外を見てみると、まだ真っ暗な中を通勤する人々が市街電車やトロリー・バスを待っていたり、足早に歩いていたりと、まさに真冬のヨーロッパの風景そのものだ。僕も気合を入れて暖かいダウンを着こんで出発する。しかし、今年は極寒だった去年に比べると気温は高く、日本の太平洋岸並みだったのにホッとする。
シャトルバスで会場に到着すると、昨年までよりセキュリティが厳しくなり、なんと空港のような荷物検査の機械が設置されていて驚いた。
SIHHには今年新たにエルメスが参加するなど、大きな変化があった。それ以外にもショパール系の別ブランドであるクロノメトリー・フェルディナント・ベルトゥー、F.P.ジュルヌのレディス・コレクションであるエレガントなど、興味深い時計を作るメゾンの新たな参加があり、いよいよ会場の規模は拡大する一方だ。これまでの会期と照らし合わせると、取材の時間が限られてしまうという、楽しいけれど大変なスケジュール作りが必要となった。
そしていよいよ待望のSIHH初日の幕が開いたのだった。
Profile
松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。SIHHは初回から欠かさず取材を重ね、今年で28回目。

撮影/岸田克法 文/松山 猛