一芸に秀でた、知る人ぞ知る名宿をピックアップする当連載。今回の舞台は滋賀。”商店街に泊まって、食べて、飲んで、買って”というユニークな体験が出来る宿である。
商店街をホテル化【滋賀県・大津市|商店街HOTEL 講 大津百町】

「暮らすような旅」の豊かさを享受する
旅先で観光スポットを巡り歩くのは刺激的だが、その土地に暮らすようにゆったりと滞在し、地元の人と同じように過ごすのも一興。大人の旅にこそしっくりくるスタイルだ。今年8月、滋賀県大津市に誕生した「商店街 HOTEL 講 大津百町」は、まさにそんな楽しみをもたらしてくれる場所。
“商店街に泊まって、食べて、飲んで、買って”というユニークなコンセプトを掲げ、旧東海道脇のアーケード商店街に点在する、築100年以上の町家をリノベーションし、「糀屋」などの名をつけて客室として運用しているのだが、この商店街が実に楽しい。
琵琶湖の淡水魚が揃う鮮魚店や、宮内庁御用達だった漬物店、コロッケが1個40円の精肉店、モーニングが人気の喫茶店など、地元に密着した商店が軒を連ね、庶民的な活気に溢れているのだ。
それは日本の原風景であり、都会では失われつつあるもの。懐かしさを探しに土地の素顔に触れる。そんな旅の歓びを、この宿は教えてくれる。