“大事を始めるには、まず手近なことから始めよ”と教える中国の故事「隗より始めよ」。良い関係を築くには、まず一緒の食事から。達人たちのリアルな会食術を掘り下げる。

今月の”会”の達人

トランジットジェネラルオフィス代表取締役社長中村 貞裕さん
1971年生まれ。慶応義塾大学卒業後、伊勢丹を経て、2001年にトランジットジェネラルオフィスを設立。カフェやレストランなど、約90店舗を運営。’17年、「外食アワード」にて外食事業者部門受賞。
自分に期待されている事を冷静に見極めて実行する
「アイスモンスター」や「マックスブレナー」など、海外の人店を次々と日本に初上陸させて話題をさらい、「ブームの裏には、必ずこの男がいる」と言われてきた中村貞裕氏の会食術は実に単純明快。ズバリ「相手の好奇心を掻き立てる店を選ぶ」のだという。「僕の強みは、やっぱり流行りのものが好きなこと。ビジネスパートナーが僕に望むのも、そうした視点です。だから、会食をセッティングする際も、その期待に応えるように努力しています」
そう話す中村氏がお気に入りの店としてピックアップしてくれたのが、表参道の交差点に程近い「青山 仁」。茶懐石に基づいた料理を堪能させてくれる日本料理店だ。意外にも正統派のチョイスのようだが、実際に店へ出向けばナルホド!と膝を打つことになる。まるで一見さんお断りの店のような、ただならぬ風情で(実際はもちろん初めての方も利用可)、扉の先にどんな世界が広がっているか、否が応にも期待させられるのだ。「僕はこの店を敢えてカジュアルに、ビジネスランチで利用しています。会食の相手をカウンター付きの個室にお連れすると、またも意表を突かれたという反応をいただけるので嬉しいですね」
“会”を成功に導くには印象に残るようなサプライズを演出する