秋の味覚をふんだんに使った夕食(写真7枚)
温泉から出て、一旦部屋へと戻り、浴衣に着替えた。玄関脇に置いてある色とりどりの浴衣。男性ものも数種類あり、紫色の龍の絵柄、帯は鼠色の兵児帯を持ってきておいたのだ。せっかくなので着姿を写真を撮ろうとセルフィーを試みたが、うまくいかず。この辺りはひとり旅のさみしさか。
さて、夕食だ。「懐石茶や 水音」の入り口にはかまどがある。ここで饗する米はすべてこのかまどで炊くそう。東府やオリジナルの日本酒を頼み、前菜をつまむ。萩豆腐、新銀杏、秋刀魚など秋の味覚が並ぶ。
ふと隣を見ると、別のおひとり様の女性がやはり食事をしている。食事時にひとりはさみしいかと思ったが、同志がいるとたとえ声をかけなくとも心強い。そう考えていたら、お椀が出てきた。
ハシリの松茸、名残の鱧。ああ、なんと日本料理の美しいこと。酒が進んで、止まらない。お造りは沼津直送の真鯛、地鰺に金目の寿司などなど。酒がなくなった、次は伊豆の地酒「大沢里(おおそうり)」に。純米吟醸原酒で、なかなかガツンとくる。折良く、強肴が炙り愛鷹牛に。野菜やキノコ、西伊豆の天草を使ったところてんなどがテーブルを飾る。
〆は先ほどのかまどで炊いた栗ご飯。ほくほくとして地味深い。「初物を食べたらどっちを向くんだっけ?」と考えるも、酒が回った頭ではよく思い出せない。帰りに「夜食にどうぞ」と菜っ葉の入ったおむすびをもらった。雨も止んだようだし、さあ、部屋へ帰ろう。

まだ22時前。寝るには早い。たしか、部屋の冷蔵庫にスパークリングワインがあったはずだ。よく冷えている。ちゃんとフルートグラスもある。そうだ、さっきもらったおむすびもあるし、深酒を誰からも中止されたりしない。これだけ揃えば、飲まずにはいられまい。