“大事を始めるには、まず手近なことから始めよ”、と教える中国の故事「隗より始めよ」。本連載「会”食”より始めよ」では、”良い関係を築くには、まず一緒に食事しよう”との発想のもと、達人たちのリアルな会食術を掘り下げる。

今月の”会”の達人

セブンシグネチャーズ・インターナショナル
代表取締役 中野陽一郎さん
1966年生まれ。上智大学卒業後ゴールドマン・サックスに入社、SBCウォーバーグ、コメルツ証券会社を経て独立。トランプやザ・リッツ・カールトンなどハワイのラグジュアリーレジデンスの分譲を手掛ける。
トランプ氏に認められた実業家の会食術とは?
僅か5分のプレゼンテーションでかのドナルド・トランプ氏の心を掴み、ワイキキにあるトランプ・タワーの販売権を獲得したことで知られる中野陽一郎さん。ラグジュアリーレジデンスを販売することから、その顧客リストには上場会社の代表や開業医などが名を連ねており、さぞかし改まった会食ばかり経験しているのではと推察するが、実際のところは「気さくな店」を利用することが多いという。その理由は会食を「ビジネスパートナーとの距離を縮める場」として捉えているからという。
「会食の席ではビジネスの話をするより、互いをリスペクトしあう関係を深めることの方が重要だと思っています。それには対面式よりカウンターで肩を並べる方がいい。横顔を見ることで相手の新たな一面に気づいたり、大将を交えて会話が弾んだりしますから」
そう語る中野さんの馴染みは六本木の路地裏にある中華料理店「虎峰」。店内には厨房を囲むようにカウンター席が設えられ、昨今の旬でもある”少量多皿”で構成されたコースが振る舞われる。
「この店ほど料理が変化に富み、なおかつワイン、紹興酒、日本酒などを組み合わせた多彩なペアリングを提供する店は知りません。お連れした方からは皆、『想像以上に楽しかった』との声を頂戴しています。とっておきの一軒です」
“会”を成功に導くには敢えてのカウンター席で肩を並べて過ごす