銀行員として進むべき道はいつも本が照らしてくれた
先ほど、佐藤氏は「銀行はお客様のサポーターである」と発言した。金融仲介機能を持つだけでなく、顧客に寄り添い、課題解決に向けて共に歩む存在でありたいとのことだが、それには型通りのマニュアルや知識だけでは通用しないだろう。実際、佐藤氏は苦労した経験を持っているようだ。
「前職でM&Aのアドバイザリー業務に携わっていましてね、自分は中堅でも、相手は企業のトップばかりでしたから、全人格をもって取り組まなければなりませんでした。そのとき手にしたのが『V字回復の経営』という本。会社のメカニズムはもとより、人をどのようにモチベートしていくかがわかりやすく書かれていて役に立ちました。時代の荒波を乗り越えるには、結局、人間力が必要なのです。私は司馬遼太郎という作家を好みますが、彼のありとあらゆる著作からも同じことを考えさせられました。だから、若手にはこうアドバイスしています。『有価証券報告書を読み込むよりも、本を読んで時代感覚や人間力を養ったほうがいいよ』と」
それから、佐藤氏は仕事のモチベーションを上げる要素について、興味深い話を披露してくれた。
「経済学の基礎的な考え方に〈限界効用逓減の法則〉というのがあります。最初にクルマを買うときはワクワクするけど、すでに何台か持っている人がもう1台買ってもさほどときめかない。人間の満足度は減っていく、ということですね。私は、モチベーションを上げる要素を「お金」「出世」「自己成長」「誰かの役に立つこと」の4つに整理しているのですが、お金、出世、自己成長は感動が薄れていくでしょう。でも、それに対して、誰かの役に立つことは逓減しない。『ありがとう』と言われるのはいつだって嬉しいもの。そうではありませんか?」
そして、佐藤氏は1冊の本を大切そうに手に取った。タイトルは『ムハマド・ユヌス自伝』。1日働いて1円しか収入が得られないような貧困層に融資し、バングラデシュの貧困削減に貢献したとして、かつてノーベル平和賞に輝いた、グラミン銀行総裁の著書だ。
「この本は、銀行員として『どれだけ人の役に立てるか』というロマンを持つ私にとって、原点回帰させてくれる1冊です。企業人としてまず考えるべきは、世の中の役に立つこと。役に立てば対価が支払われる。やり甲斐も生まれる。その哲学で、私は東京スター銀行を統率していきたいですね」
BOOK
自分の視野を広げてくれる
書物に価値を見出す
GLASS
銀行業のキーワードは「信頼」。
お客様を不快にさせない選択が大切

鯖江クオリティとはまさにコレのこと
佐藤氏が「空気のような掛け心地」と評するのがフォーナインズの1本。メガネの加重を分散させるために、フレームに極端な厚みと曲線を付けるという、福井県鯖江の高度な職人技が息づいたプロダクトだ。

丸顔を引き締めるフレームタイプとは?
レンズの上部にだけフレームがあるハーフリムはすっきりと知的でクールな印象をプラスし、面長に見せる効果を持つ。「丸顔の私にはうってつけ。何度もフィッティングした結果、より柔らかい印象を与える、ガンメタル色のチタンフレームを選びました」(佐藤氏)
[MEN’S EX 2018年11月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)