【カクテルコンペ最優秀賞作品】「優雅」に込められた、”日本の四季とおもてなし”の心とは?

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「優雅〜美しき和の心〜」は、こうして完成した!

優雅
5種類のリキュールやシロップを使い、日本の四季を表現したカクテル「優雅〜美しき和の心〜」。

さて、いよいよバーテンダーの和栗富士也さんがご登場。 私はカクテル審査員をした大会当日は、別室で審査をしていたので、最優秀賞受賞作品となった「優雅〜美しき和の心〜」を作る全工程を見るのは初めてだ。

まずは、冷蔵庫から取り出した冷やしたグラスに、氷を入れてかきまぜる。

グラスに氷を入れて
氷をかきまぜる
この氷を混ぜるスピードや時間も味の決め手。

「実は私の父も、このホテルメトロポリタンでバーテンダーとして働いていました。そんな父を見てきたので、飲食の仕事に関わりたいと思っていましたが、大学時代は洋酒もほとんど飲んだことがなく、自分がバーで働くことはまったく考えていなかったんです。でも、父の仕事を見にバーにやって来て、バーテンダーの方たちがさまざまなカクテルを作り出すのを見て、ゼロからどこまで出来るのか挑戦してみたい気持ちになりました」

そうして、知識ゼロからバーテンダー修行を始めた和栗さんは、「最初はお酒の名前も全然分からなくて、お店に向かう足が重かった」という時代から徐々に腕を上げ、日本ホテルバーメンズ協会の資格も取り、カクテルコンペの大会にも挑戦するようになった。

「最初は地区大会の予選も通らなくて。でも、挑戦して2年目からは全国大会までいけるようになりました。和栗富士也という自身の名前を意識して、日本的なフレーバーの作品を作りたいと思い、2年前くらいにも日本酒ベースの創作カクテルにトライしたことがありましたが、そのとき、納得するものは出来なかった。今年の夏に出た『WATSUNAGI』という徳島のすだちフレーバーのシロップを味見して、『これは美味しいものが作れるかもしれない!』とピンと来ました。そうして5種類のリキュールとシロップをブレンドした自信作「優雅〜美しき和の心〜」が誕生しました」

優雅に使用したカクテル
桜やすだち、ゆず、巨峰と、日本の四季のフレーバーが凝縮されている。

「春は、桜の甘い香り。夏は、徳島すだちの柑橘系のフレッシュさ。秋は、巨峰の紫。冬は、にごりゆず酒。ベースには、ジャパニーズクラフトジンの「ROKU」を使いました。実はこのジンにも、6種のボタニカル(桜、桜葉、煎茶、玉露、山椒、柚子)が使用されていて、四季のフレーバーに深みを持たせてくれます」

これらの原材料を、何度も試作して決まった絶妙な分量で配合して、シェイクする。

優雅をシェイク
「冷やしすぎず、加水しすぎない」が美味しく作るコツのひとつ。

「このカクテルは、”冷やしすぎず、加水しすぎない”ことが味の決め手となります。カクテルをシェイクするスピードや間合い、力加減はバーテンダーによって違いますから、人が考案したカクテルを作るというのはとても難しいですね。この『優雅』も、このカクテルの味の良さを理解してシェイクしないと、美味しい!と思える味に仕上げるのはなかなか難しいと思います」

プロフェッショナルなシェイクでシャカシャカと氷と液体を混ぜながらそう話すと、一瞬で優雅は仕上がった。

最後、カクテルをグラスに流し込むスピードや量も重要だ!

最後には、「大変ですが、毎日、開店前に心を込めて手織りしています」という千代紙の折り鶴をくくりつけた竹のピックを挿して、完成!

優雅の完成形
お店で提供している、完成形になった「優雅」。

一口飲んでみると、「あ〜、この桜の優しい甘い感じと、柑橘のすっと爽やかな感じがとても美味しかったんだ!」というあの大会で審査したときの感動が蘇ってきた。そういえば、ゆずや巨峰のフレーバーも、後からほんのり漂ってくる。甘すぎないのもポイントで、爽やかに喉を通っていくのでどんどん飲めてしまう。

折り鶴がぶら下がった優雅
横にさりげなくぶら下がった折り鶴も日本らしくて◎。

「一度、肩を壊して、まったくシェーカーが振れなくなった時期がありました。シェーカーを振れずにお店に立つことほど辛いことはありません。そのとき、『また和栗さんのカクテルを飲みたいから頑張って!』と、たくさんのお客様に支えていただき、それで勇気をもらってリハビリしてまたカクテルを作れるようになりました。グラスに折り鶴を添えたのは、そういった感謝の気持ちもあります。そしてこの感謝の鶴を、日の丸をイメージしたチェリーに挿した串から、”赤い糸”で吊るしました。27歳になった今年、感謝の気持ちを込めたこのカクテルで最優秀賞をいただくことができ、本当に嬉しく思っています」

和栗さんのこのカクテルには、日本の四季やおもてなしの気持ちだけでなく、これまでのいろいろな経験や感謝の気持ちも込められていたのだった。このカクテル『優雅〜美しき和の心〜』は、11月30日まで、全国のメトロポリタンホテルズのバーにて販売。そして和栗さんは、実はバーマンとして修行を積んできた池袋のホテルメトロポリタン内のバー「オリエントエクスプレス」から、11月1日より東京ステーションホテル内のバー&カフェ「カメリア」にてシェーカーを振ることになったそうだ。

このカクテルが同じバーテンダーさんにより、違うバーで出てくるとどんな感じなのだろう? 今回の審査員経験を経て、バーやカクテルの奥深さに興味が沸いてきた。

11月になったら、東京ステーションホテルにも足を伸ばしてみよう。

■カクテル「優雅〜美しき和の心〜」

カクテル「優雅〜美しき和の心〜」

販売価格:1400円(税サ込)
販売箇所:バー「オリエントエクスプレス」http://www.metropolitan.jp
ほか、メトロポリタンホテルズのバー、もしくはレストランhttp://www.jre-hotels.jp/metropolitan/
東京ステーションホテルのバーhttps://www.tokyostationhotel.jp/

販売期間:11月30日(金)まで

関連記事:前編
13名のバーテンダーが競い合った「カクテルコンペ」の最優秀作品とは——?

撮影・文/平澤香苗(MEN’S EX ONLINE編集部)

バー「オリエントエクスプレス」の入り口。

バー「オリエントエクスプレス」の入り口。

本物の列車の車輪が壁のオブジェになっている。

本物の列車の車輪が壁のオブジェになっている。

この奥にはどんな世界が……? 期待高まるエントランス!

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オーセンティックなカウンターバー。

オーセンティックなカウンターバー。

列車のラウンジを彷彿させる店内。

列車のラウンジを彷彿させる店内。

キープボトルは、実名でなくシリアルNo.で管理されている。年代モノのウイスキーもたくさん!

キープボトルは、実名でなくシリアルNo.で管理されている。年代モノのウイスキーもたくさん!

プライバシーがしっかり守られているのも嬉しい。

プライバシーがしっかり守られているのも嬉しい。

冷やしすぎず加水しすぎず、な絶妙シェイクを経てカクテルが完成。注ぐ速度や量にも細心の注意を払う。

冷やしすぎず加水しすぎず、な絶妙シェイクを経てカクテルが完成。注ぐ速度や量にも細心の注意を払う。

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