
オリス社の環境への取り組み
オリス社が日本法人を立ち上げ、そのプロモーションの一環として、過日東京の青山通りと表参道交差点近くに、ポップアップショップを開き、スイス本社から旧知のヘルツォーク会長が来日するというので「友有り遠方より来たる」と出かけてみた。
堅実な時計づくりで知られるオリスは、スイス時計の良心のような社風を持つ会社で、これまでも命を潤す水の水源を守る運動や、海の生態系を守るための資金を集める運動の特別モデルの時計を作ってきたが、今回発表されたのは深刻な汚染が危惧される、マイクロプラスチックの拡大を少しでも防ごうという「ワールドクリーンアップデー」への取り組みを訴える時計である。

これまでも廃棄されたプラスティックごみが海に流れ出し、美しい海岸風景を台無しにしてきたが、またさらにウミガメなどが透明なポリ袋をクラゲだと思い込んで飲み込んでしまい、その結果消化できずに死んでしまうようなことが、環境問題として取り上げられてきたのだが、事態はさらに深刻であるという。
なぜなら様々なプラスティック製品が海の中で分解されて、細かな粒となって、それがプランクトンなどとともに魚に食べられ、さらにその魚を人間が食べることで、人間の体内に取り込まれてしまうという、マイクロプラスチックの恐ろしさが指摘し始められたからだ。なんとその数、推定で5兆個というから膨大なものだ。そして恐ろしいことに最近の調査によると、市販される食塩の90パーセントにも、マイクロプラスチックが混ざっているというのだ。

オリスでは環境を少しでも守るために、プラスティック製品をリサイクルし、それで強靭な糸を作り、イタリアの工場でそれを時計ベルトにする取り組みを始めたという。ネイビーと褐色の糸をディアゴナル模様に織り上げたそのベルトを、オリス ダイバーズ 65(シックスティファイブ)に採用した。
探検家にして環境保護を訴える映像作家、ジェローム・デラフォーズの呼びかけに応じて、オリスも「ワールドクリーンアップデー」の重要性を訴える。
「クリーンアップデーは毎日のことです」という言葉を、僕らも肝に銘じたい。

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松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。
撮影(取材)/久保田彩子