初のショップスタッフ体験
大学生になると、はじめてファッションのお店で働くことになった。お店はジーンズショップの「ニューアメリカ」。初めての接客は面白いし、洋服が好きであることも、より実感できたと、田野さんは振り返る。
もっと自分好みの洋服を販売してみたいと、シップスやビームスへ履歴書を送ったところ、シップスのアルバイトとして採用が決まった。大学1年生の秋から、念願のシップスで仕事が始まると……。
「アルバイトをたくさんして、服を買いまくったんですよ。当時買った、ジェイエムウエストンのローファーは、確か、価格が6万9000円だったと思います。その価格を聞いて驚いた親に、学費を止められそうになったこともありました」

ついにシップスの正社員に昇格
大学卒業時は氷河期と呼ばれた就職難の時代ではあったが、3年半のアルバイトの末、試験をパスしてシップスの正社員に昇格することができた。2001年には有楽町の店舗でショップマネージャーになるなど大活躍。シップス時代の印象に残っていることを聞いてみた。
「京都店の店長をしていた時代に、本部の人たちと一緒に海外へ仕入れに行くことがありました。厳しくて怖い先輩が多かったし、自分が地方の店舗のスタッフだとみなさんと距離も感じてしまいます。でも、酒の場で親しくなることができたし、上手くコミュニケーションをとるのは得意でしたから」と田野さん。
確かに、実際に会うと田野さんはなんとも話し上手で、実にイヤミのない人柄が印象的。きっと気難しい先輩がいても、受け入れられたに違いない。
12年のシップス勤務ののち、周囲の勧めもあって、田野さんはいよいよ独立を決意する。「好きなインポート物に囲まれて生活ができればいいなと。独身で背負うものもありませんでしたから」と田野さん。
2006年のグジ設立からしばらくすると、ベルヴェスト、オリアン、ルイジ ボレッリ、マッキントッシュなど人気のブランドを並べられるようになった。新規店とあって、最初から仕入れがスムーズだったわけではない。人気ブランドは少量の買い付けが難しいため、無理をして仕入れ量を多くするなど、苦労を重ねて人気ブランドをはじめとする製品を取り揃えていったのだ。