THE CAMPBELL BAR」はどのように作られたか?

その伝説のバーの名前は、「THE CAMPBELL BAR」(キャンベルバー)という。グランドセントラルステーションの、ヴァンダービルト通りというとても分かりにくい通りに、ひっそりと入り口がある。



もともとは、1923年にアメリカの金融家でノース・メトロ鉄道の幹部でもあった億万長者、ジョン・W・キャンベル氏が、自信のオフィスをこのグランドセントラルステーションの中に作ったのが始まり。室内に暖炉を入れたり、下階を見下ろせるロフトも作ったりと、ゴージャスなオフィスとなっていた。夜になると、彼は仕事仲間や友人をオフィスに招き、音楽を聴いたり、お酒を飲んだり、禁酒法時代の隠れ家的な交友の場としても使っていたそうだ。
1957年に彼が亡くなった後は、その華やかな場は、倉庫として使われていたが、1999年にグループ会社に買い取られ「The CAMPBELL APARTMENT」というバーに生まれ変わったそうだ。それも2016年に一度クローズしてしまい、2017年の春、「The CAMPBELL BAR」として待望の再オープンを果たしたそうだ。
そして再オープンした、めちゃめちゃカッコいいバーがこちら!

オープンは12時からだが、早くも12時からここの存在を知っているニューヨーカーや観光客の方たちが一杯飲みに訪れていた。昼の時間帯でも店内は採光を落としてムーディな感じ。当時キャンベル氏が、13世紀のフィレンツェをテーマにして漆喰の壁に描かせた手描きの絵やステンドグラスなど、ゴージャスな内装が大切に残されているのも、また素敵なのだ! また、店内の奥には、キャンベル氏が使っていたと思われる名前入りの金庫がそのまま、オブジェとして暖炉の中に置かれていたりもして、そんなところもさりげなく歴史を感じさせてくれるのだ。

また、上にはロフト階もあって、この上から下の内装を見ながら一杯……というのも素敵な時間。


写真好きも必見! 歴史を感じさせるキャンベルバーの内装(写真5枚)
窓枠や天井、部分的に昔の姿をそのまま生かして再生されたこのバーに座っていたら、この雰囲気、何かに似ている……気がしてきた。そして東京駅の「東京ステーションホテル」のバーが、頭の中にふっと浮かんできた。そういえば東京駅も、駅舎が出来てから100年以上が経ち、その古い駅舎に2012年、東京ステーションホテルは「歴史的復原」をした。その中にあるバーオークやバーカメリアは、壁の一部に100年前の赤レンガを使ったり、鉄骨が残っていたり、壁のサインに昔のままの書体を使っていたりして、それはそれはいい雰囲気なのだ。
当時私は「復原」という単語をあまり聞いたことがなくて、「復元」の間違いかなと不思議に思った記憶がある。そして、実は「復元」は「失われて消えてしまったものをかつての姿どおりに新たに作る」という意味で、「復原」は「元々の姿が改造されたり、変化してしまった現状の姿を元通りに戻す」という意味であることを知った。東京ステーションホテルは、見事に100年の時を経て復原し、その建物は「Living Heritage」と呼ばれている。それと同じように、マンハッタンの玄関口であるこのグランドセントラルステーションのキャンベルバーも、見事な復原によって「Living Heritage」として蘇ったのだ。