キャリアを積んでわかった読書することの大切さ
さて、今度は本から野原氏の考え方を紐解きたい。氏が挙げられたのは英国の元首相、マーガレット・サッチャーの自伝『サッチャー回顧録』と、都市学の定番本として名高い『東京の空間人類学』。2冊の性質はまったく異なるが、それには理由があるようだ。
「キャリアを積み、役職が上になって初めてわかる大事なことがいくつもあります。そのうちのひとつが自分の意思を伝える文章を書けるかどうか。これは20代、30代のときにどれだけ読書したかによって決まると私は思っています。例えば、私はスピーチの原稿を自分自身で書いていますが、なんとか成り立っているのは、『サッチャー回顧録』はじめ良質な読書経験のおかげでしょう」
また、いろいろなジャンルの本を読んでおくと、会食の際に話のきっかけを作れるなど、その経験がちょっとした機会に生きてくるという。
「私の場合は例えば『東京の空間人類学』。もともと地理が好きだったからでしょうか、アップダウンが多い東京の街に興味を持ち、この本を読んで目から鱗が落ちました。思い起こせば、30代の頃に東京中の坂という坂をすべて制覇しましたっけ(笑)。退職して時間ができたら旧街道をゆっくり歩いてみたいですね」
取材中、話が途切れることは一度もなかった。本を読むことから会話の引き出しが豊富に得られるという事実を、まさに野原氏は体現しているように感じられた。
BOOK
己の意思を文章で綴れるかどうかは
30代までの読書の質と量で決まる
GLASS
銀行からカード会社に移り、
モノを見る道具から装う道具へ

カジュアルな雰囲気をカラーフレームで演出
「同じ金融業でも銀行業界とクレジット業界は異質。よりやわらかな雰囲気を演出できれば」との想いから、オフィシャルな場面では茶色いフレームの「OPUS」を愛用。チタン採用による軽量化と広い視界により長時間掛けても疲れにくいという利点もある。

転職を機に新調した思い出の一本
銀行員時代は銀縁のメガネを愛用していた野原氏だったが、転職を機に、表参道の「GLASS GALLERY 291」にて鯖江生まれのメガネブランド「OPUS」のコチラを新調した。
[MEN’S EX 2018年9月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)