奥野さんの思い出写真館 Part2(写真2枚)
ヒット企画を次々に生み出すことに成功
企画では人気商品を生み出すために、まずセレクトショップにないものを作るのが目標。そこで、ユニークな企画を次々に繰り出して、数々のヒット商品が誕生した。
まず着手したのは生地の企画。スナップで見たイタリアの著名人、ラポ・エルカーン氏が着用していた大胆なジャケットのチェック柄を再現したり、カシミヤとキッドモヘアをミックスした生地を作ってみたり。後者は冬と夏の生地をミックスすることで、ハリがあるのに柔らかいユニークな素材が出来上がった。
当初はイタリア、英国の生地で様々な企画に挑戦し、次第に奥野さんは日本製の生地にも目を向けるようになる。最初に手掛けたのは綿麻のダンガリー。また、どこにも負けない強度があるといわれるほどの播州産のオックスフォード生地を使った一着は「帆布?」と言われるほどのしっかりしたもの。

ヒット企画は枚挙にいとまがない。ウィリアム ハルステッドのモヘア混のソラーロ生地などは、「とりあえず、依頼してみたら出来上がりました」と奥野さん。
苦労しつつ成功と失敗を繰り返す中で、奥野さんが気付いたのはストーリー性の重要さだ。品質が良いのはもちろん重要だが、お客様は製品にまつわるストーリーに魅かれる部分も多い。一例がウィリアム ハルステッドに発注したウール×モヘアのムーンクロスなる生地である。当時、ソラーロはサンクロスと呼ばれて人気を集めていた。が、サンクロスならどこにでもある。そこで考え出したのがムーンクロス。サンクロスが太陽の下で輝くのに対し、月明かりの下で光る生地がうたい文句だった。

雑誌とのパイプで企画を実現
一方で、雑誌の企画にも積極的に協力を行なったのも、奥野さんだからこそ。雑誌の別注企画などに参加することで、モノづくりの背景も伝えていき、リングヂャケットを知ってもらえるように努力したという。当時、奥野さんがプレスと企画を兼任していたからこそ、雑誌ともうまく連携することができて一気に企画を実現することができたのだ。「仕事が分業化されていて、私が部分的にしか携わらなければ、企画倒れに終わっていたと思います」と奥野さん。