
加藤え!パソコンがなくて仕事になりますか?
寺尾パソコンはどうしてもあの枠に支配されるというか、必ずアプリケーションを使うじゃないですか。そこに限界がある。例えばデザイナーならCADやイラストレーターやフォトショップでできることしかできなくなる。でも、本当のクリエイティブとは、その枠自体を疑って、ルールすら変えることだと思っています。既成概念の中でどういう出方をするかじゃなくて、我々ならお客様を喜ばせるという真の目的のために「いっそこうやったらどうですかね」とちゃぶ台をひっくり返すことが大切じゃないかと。
加藤私もSNSはやってないんですが、そこに支配されたくない気持ちがあるのかもしれません。
寺尾一番まずいのは考える時間が減ること。スマホですぐに調べられちゃうので、昔のように空想したり仮説を立てたりすることがなくなってしまった。考えることをしなくなったら、人間は相当あぶない生き物になります。だから、私は仕事に関わること以外はあえて調べません。「そういうことだったんだ!」と、その意味を知ったときの喜びを取っておきたい。「いつかスマホも捨ててやる!」とも思ってるんですけど(笑)。
加藤寺尾さんと一緒なら、私も捨てることができそうです(笑)。
寺尾他にもスマホがあることで待ち合わせのときに「相手が来るかな」というドキドキ感とか、反対に「来なかったらどうしよう」というリスクや想定外の事態への対応力も落ちていると思います。
加藤本当ですね。最後に今後、バルミューダをどんな会社に導いていかれようと思っていますか?
寺尾世の中を豊かにしたいというより” 思い出” を残す会社でありたい。あと人に勝ちたいというより、自分に負けたくないですね。
加藤深いですね。
寺尾先ほども話しましたが、僕の中には「社会や人と噛み合わない人生を送るのはもうごめんだ!」という壮絶な思いが今もある。だから死に物狂いで今を未来に繋いでいかないといけないのと、「ここまでやったら負けるわけがない」という万全に準備すれば、きっと負けないと思っています。
加藤2月に平昌オリンピックの取材に行っていたんですが、スピードスケートで悲願の金メダルを獲った小平奈緒さんが「ずっと応援してくれる人のためにとか考えすぎていたけど、自分がスケートをやりたいから、やるだけのことをやる」と切り替えることができたのが大きな変化で、そのことで強くなれたと言っていました。
寺尾人からの期待じゃなくて、自分への期待を裏切らない人生を送りたいですね。
加藤そうあることができるように私もがんばります!
カトMEMO
- 今ある常識を疑うこと。違和感に気づくこと
- 人が嬉しくなる物作り
- クリエイティブな発想のために考える時間を持つ
スペシャルフォトギャラリー
[MEN’S EX 2018年6月号の記事を再構成]
撮影/前 康輔 スタイリング/後藤仁子 ヘアメイク/平山直樹(wani) 文/岡田有加(edit81)