アイネックスへの社名変更を進言
「最初、商品を作って展示会をしたものの、3日間、誰もこない(笑)。来るのは前からお付き合いのある古いお店さんだけ」。
新規開拓をしなくてはと思い、流行りのお店へ積極的に挑んでいく毎日。
「『伊藤用品の仙田と言います』と営業して回っていると、あるセレクトショップの人から『同業者じゃないの?』と聞かれました。メーカーなのに、名前から小売店のように思われたのでしょう。さっそく会社に社名変更を申し立てて、自分で考えたアイネックスを提案しました。伊藤のネクタイでアイネック、これにスをつけてアイネックスに。先輩も社名の案を出しましたが、結局、僕の案が通りました。Inexxの頭にAをつけると、順番が最初になるので、英字は現在のAinexxに収まったのです」。

イタリアでネクタイを買い付けたい!
この頃のネクタイメーカーは、一次問屋、二次問屋があり、問屋から仕入れた製品を取り揃えているのが一般的だった。これでは個性がある製品は用意できないし、人気の他メーカーには勝てない。そこで仙田さんは、28歳の時にイタリアでの買い付けを会社に提案する。社内では、その意味が理解されなかったが、なんとか出張に行かせてもらえることになった。また、業界でイタリアに拠点を持ち、ネクタイを広く取り扱っていた関係者があり、その人が運よくイタリアを案内し、仕入れ先を一緒に回らせてくれたのだ。
大手ネクタイメーカーではイタリアに買い付けに行くのが当たり前。といっても、後発のアイネックスはイタリアに行っても「知らないなぁ」と言われてしまうばかり。当時、イタリアでネクタイを仕入れる場合、一色160本がミニマムロットであった。
「本来ならアイネックスの予算では一色24本しか仕入れられません。しかし、160本は無理でも、なんとか1色80本ずつにして仕入れることができました。仕入れたからには売らなくてはいけないので、郊外型紳士服店のバイヤーさんに買っていただいて、どうにか売り上げを作れるようになっていったのです」。