多くの個を束ね、組織を成功に導いている一流のトップには、どんな思考があるか?会社のマネジメントにも役立つ”ヒント”を加藤綾子さんがそっと探り、お届けする。
第2回「星野リゾート」 代表 星野佳路さん[後編]

Profile
加藤綾子 Ayako Kato
1985年生まれ。2008年フジテレビ入社、看板アナウンサーとして活躍。2016年よりフリーアナウンサーとなり、さらに活躍の場を広げている。著書に『あさえがお』(小学館)。
「トップも中間管理職も立場を気にせず、普段からフラットな人間関係をつくっておかないと、下からのアイデアや企画は出てこない」(星野さん)
どんなに仕事をしても結果はさほど変わらない
加藤とはいえ、フラットな組織にするのは時間がかかりませんか?
星野最前線でサービスを提供しているスタッフたちは意外にフラットになりやすい。難しいのは中間管理職です。私が”フラット政策”を始めるまでは、彼らは情報量の差やポジションによってステータスを維持していた一方で、間違ったことを言えないプレッシャーに晒されてきました。本当は、正しいことをいう必要はないし、間違ったことを言っても責任を問われることもないことをまず理解してもらうことが大事です。
加藤社員との向き合い方にも、星野さんの心が感じられて、素敵です。
星野そう言っていただけると美しいストーリーになりそうですが、実はビジネス組織論の大御所でもあるケン・ブランチャードが書いた教科書通りにやっているだけなんです。私は自分の判断にあまり自信が持てない。でも、教科書という拠り所があれば、少々うまくいかなくてもやり続ける勇気が出てきますし、ビジネスでは神のお告げはないので、どうしても理論が大事です。他にドラッカーの「予期せぬ失敗はイノベーションの機会」という教えも社員に実践してもらっています。いずれにしても国内36拠点、海外2拠点、社員2400人の組織をどうフラットに保つかが、私の重要な仕事です。
加藤国内外で約40もの拠点には頻繁に足を運ばれるんですか?
星野いいえ。年間60日間は趣味のスキーをすると決めているので、そんな時間はありません(笑)。今のところ社員だけがメンバーの「星野グルメスキークラブ」という団体までつくって、東京都スキー連盟に登録もしているんですよ!
加藤「グルメ」と付いているのが、かわいらしいですね。
星野「グルメ」を後から付けたら、急に参加者が増えました(笑)。例えば山形でのスキー合宿ついでに、奥田政行シェフの「アル・ケッチァーノ」のイタリアンを食べに出かけるという感じで、「グルメ」だけに参加して帰るもよし、としています。
加藤自由な参加形態も魅力です。
星野そういうわけなので、スケジュールにはまずスキーの日程を埋め込んで、残りの時間で仕事をすると割り切っているので、現場にもできるだけ行かないようにしています。そうでないと、延々と仕事をし続けないといけなくなりますから。