加藤世界に出ていくなら、どこの国や街がいいと思われますか?
辻本 やっぱりグーグルやアップルがある北カリフォルニアのベイエリアでしょうね。東海岸はヨーロッパの歴史を引き継いだだけで、せわしないし、保険と金融と政治しかない。例えば日本の政治に関しても、海外のビジネススクールに進んで世界的な企業に勤めている若い人を引き抜いて、行政に入れるとかをぼちぼちしないといかんな。
加藤すぐに潰されてしまいそうな案ですが……(苦笑)。
辻本でしょうね。それと、22世紀は地球規模の問題が大きくなるはずで、都市計画から何から全部変わってくると思います。今、東京オリンピック需要でマンションやビルが建設ラッシュですが、一方で空き家は700万軒もあって、人口も会社も増えていない。これが過疎化したらスラム街になります。だったら、思い切った都市づくりではあるけど、関東平野に地上200階・地下100階のマンションを数棟建てて、各棟に10万人が住めるようにする。地下には道を整備し、無人車が行き来する。畑は全部屋上につくって水耕栽培をする。それ以外の大地は全部森にする。どうですか? 2000兆円くらいはかかりますね(笑)。
加藤大胆すぎて、驚きです!
辻本ただ、それを国に言ったところで通用しない。でも、ゲームのシミュレーションなら、すぐにできます。作ってみて、よさそうだとなったら、やってみようかってことになりませんか? つまり、ゲームやITといった最先端のインフラのレールに何かを走らせたら、すごいものが出てくるんじゃないかと。
加藤具体的に未来を語るより、イメージのトライ&エラーから、正しい道を模索することができる。
辻本そういうことです。シミュレーションやCGで情報を取りながら、ベストな方法を探る。地上200階の建物もシミュレーションしてだめなら、やめればいい。仮想現実なら建てるも壊すもお金はかからない。
加藤辻本さんの思考のヒントは、本当にいいワインを体感スコアで判断するお話にも顕著でしたが、今の道筋や時として先入観を、数字やシミュレーションを通じて常に検証する姿勢に尽きるのかなと感じます。
辻本ちなみにケンゾー エステイトも、シミュレーションしながらここまでやってきました。経営を退く前に自分の頭の中のあらゆるイメージを元に、箱作りだけはしておきたいと思っています。

Profile
辻本憲三 Kenzo Tsujimoto
1940年生まれ。(株)「カプコン」代表取締役会長。1998年からナパ・ヴァレーでワイナリー建造に着手し、2010年「KENZO ESTATE」を開業、現オーナーとして指揮を執る。
カトMEMO
■どんなに上の立場になっても常に消費者目線。
■絶対的に数字を信頼する。
Kenzo Estate Winery

1Fは独創的なおばんざいが楽しめるカウンターダイニング、2Fはモダンフレンチと本格的日本料理を味わえるメインダイニングが広がる六本木ヒルズ店。なお、KENZO ESTATEのワインが購入できる直営店はここも含め、広尾、大阪、祇園、ナパ・ヴァレーの「Kenzo Napa」のみ。
住所:東京都港区六本木6-12-4六本木ヒルズレジデンスD棟1F・2FTEL:03-3408-1215
営業時間:1F:11時〜L.O.27時 2F:17時〜L.O.22時
休日: 1F:無休 2F:日曜
[MEN’S EX 2018年1月号の記事を再構成]
撮影/前 康輔 スタイリング/後藤仁子 ヘアメイク/遊佐こころ(piece monkey) 文/岡田有加