加藤ちなみにお休みの日は楽しく過ごされていますか(笑)?
辻本休みはないんです。だいたい土日に移動しているからなんですが、1ヶ月のうち、カプコンの本拠がある関西に10日、東京に10日、ナパに10日という束縛された人生を送っています。
加藤息抜きの時間は全く?
辻本自分を緩めるのが目的ということではなく、60歳を迎える数年前に「年寄りにならないように、ゴルフでシングルプレイヤーを目指す」と決めてから、早朝に練習に行ったりはしています。ゴルフは数字なので、昔と今が比較できるでしょう?
加藤そこも数字なんですね!
辻本もう20年近く、全スコアを手帳にメモしています。やっぱり人間は目標がないと進みようがないですよ。体調が優れなかったり練習を休んでいると、数字もよくない。
加藤若い頃から常に目標はありましたか?
辻本10年単位であったように思いますね。仕事というのは初めは自分の生活を守るため、それがうまくいけば次は家族、会社ができれば会社のため……という段階を経て、最終的に社員を一生食べさせることができれば、自分のことはどうでもよくなる。仮に何兆円の個人資産を持ったとしても、あの世には持っていけないですよ。お金を増やすのが好きな経営者もいますし、誰かに経営を託して株だけ保有して退く人もいますけど。
加藤そういう境地に達したのはお幾つくらいのときですか?
辻本中学2年で父親が亡くなって、自分で仕事を探さないと3日で死んでしまうという状況におかれたときからですかね。
加藤ご苦労されたんですね。
「今まで数字を遠ざけてきた自分を取り返したいです(笑)」
(加藤さん)
世界と未来とシミュレーション
加藤今の若い社員を見ていて感じることはありますか?
辻本昔も今も若者はあまり変わらないと思います。むしろ男性の場合、ほとんどが幼稚園の頃からゲームに親しんで育っている。だから、この業界の流れをよく知っていて、カプコンに就職すれば50年も100年も食いっぱぐれないと知っている新卒の技術者から毎年何万人も応募があるので、精鋭を選抜できる。大事なのはそういう子に「何十年か後はこうなるよ」と未来像を語ること。そうしないと、50年近く一生懸命に働いて、結局ご飯を食べるだけの仕事になってしまいます。
加藤辻本さんが今、若い社員に具体的に語られている未来は、どんなものですか?
辻本まず、もっと海外に出ていかないといけませんね。若者は優秀だし、日本は世界で一番いい国ですよ。
加藤それは海外旅行に一週間行っただけでも感じますね。日本は安全だし、清潔だし、パッと入ったところでもご飯は美味しいし。
辻本要するに居心地がよすぎる。