50歳を迎えて新たな取り組みを開始
中川さんは出店について一つの思いを持っていた。それは50歳の誕生日までに新規出店を終えること。本当の一流になるために必要と考えた銀座に続き、新宿三丁目への出店で、思いは達成された。では、ユニオンワークスで彼がやりたいことは、すべてやり切ったのかといえば、そうではない。2015年には社内の体制をよりよいものにしよう!との考えから社員の給料アップに取り組んでいるし、物販のさらなる充実がいまは楽しいそうだ。
「下着からコートまでトータルで販売したいと考え、昨年12月に銀座店2階をザアッパーギャラリー(※)というショップにしてオープンしました。いまは靴のほか、ソックスやベルトなどまで展開しています。一番のお気に入りはコート3型。私は昔からコートが大好きなのです。1型はサウンドマンとのダブルネームで、あとの2型はバタクとのダブルネーム。自分が着用して本当に良いと思ったものや感動したものだけを扱っています。ピュアな気持ちでいることが大事ですよね」
※ザアッパー ギャラリーは現在、土日のみの営業。
靴修理を単なるリペアではなく、愛情と職人技の詰まったサービスに格上げし、普及・定着させたのは紛れもなく中川さんの功績だ。ユニオンワークスが登場したときに、救われた気持ちになった靴愛好家が、日本中にどれほどいたことだろうか。愛着のある一足を満足のいく形で修理して長く使い続ける。いまでこそ、当たり前のサービスが生まれた背景には、一人の男の情熱があったことをぜひ知っておいていただきたい。
撮影/久保田彩子 取材・文/川田剛史