そして新型は、先代モデルに対して、スポーツ性と快適性の両面で明確にアップグレードされていた。試乗車にはまずオプション設定の「ダイナミックオールホイールステアリング(AWS)」が装着されており、時速60km/h以下の低速では後輪が最大5度の角度で前輪と反対の方向に操舵を行い取り回し性を改善。最小回転半径は0.5m短縮する。一方で60km/h以上の速度域では後輪を前輪と同じ方向に操舵し、直進性や車線変更時の操縦安定性を向上させるのだ。
実は4輪操舵技術は1980年代に日本車で実用化されたものだった。しかし、操舵時の違和感が拭えず消化不良のまんま人気は下火になっていたが、近年、欧州のプレミアムスポーツモデルがこぞって採用し、ブームが再燃しつつある。この最新のA7でも、この技術をはじめ「ダンピングコントロールサスペンション」やステアリングの操舵角が大きくなるにつれてステアリングレシオが変化する「プログレッシブステアリング」などすべての機能が一体となって、応答性のよいハンドリング特性と快適な乗り心地を実現している。
かつては、A7のようにスタイルの良さもフォーマルさも実用性もすべてを1台で賄おうなんて欲張ると、どこかが中途半端になってしまうものだとうるさ型には文句のひとつも言われたものだ。しかし、新型は見事に最新の技術を積み重ね口うるさい周囲を黙らせるほどの域に達したようだ。
文/藤野太一 撮影/柳田由人 編集/iconic