日本のE-BIKEシーンを動かすESCAPE RX-E+
このESCAPE RX-E+に、メカニズムの面でこれといって際立った目新しさは見つからない。しかし、見る者を振る向かせる流麗さと自転車マニアをも納得させる緻密な設計を兼ね備えていることは確かだ。フレームと一体感を持たせた同色のバッテリー、グリップと一体化させたコントロールスイッチなどに、電動アシスト車然とした野暮ったさを排除するべくこだわった、後発モデルならではの隙のなさが感じられる。
スポーツ性と快適性のベストバランスを狙った32Cという絶妙なタイヤサイズ、前後ホイールの固定方法に剛性感の高いスルーアクスルを採用してきた点など、妥協のない車体設計はスポーツバイクブランドならではの意地とも受け取れる。心臓部となるモータユニットはヤマハとの共同開発、大容量バッテリーの製造はパナソニックが担当するというアッセンブルもライバルブランドには真似のできない芸当だ。
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その完成度の高さは試乗してみることでより実感できた。登坂力にばかり目が行きがちなE-BIKEだが、ライバル車との差がより明確に感じられたのは下りルート。スピードの乗った下りでも怖さを感じることは一切ない。制動力に長けた油圧ディスクブレーキと設計を煮詰めたフレームが20kg超えの車体をしっかりとサポートしてくれる。登坂力に力強さは語るまでもなく、平坦路での人の感覚に寄り添ったアシストフィールはスポーツバイクに乗り馴れた人にも受け入れやすいはずだ。
大本命の登場によって一気に高まった、E-BIKEに求められるハードルの高さ。追随するライバルブランドはいよいよ本腰を入れざるを得ない状況となった。ESCAPE RX-E+のデリバリーが開始される来年1月、本当の意味での「E-BIKE元年」が幕を開けることになる。

文/村瀬達也 構成/アイコニック