
個人的にもっとも試してみたかったのが、シリーズ2時代の’75?’77年にわずか1万台程度造られた2ドアクーペの、しかも12気筒を積んだモデルXJC12だった。
英国のカントリーロードを駆けているあいだに、XJC12の運転席に座る順が巡ってきた。落ち着いたマルーンにブラックビニルトップのコーデも洒落た一台で、眺めているだけで欲しくなってしまう。40年も前のジャガーの、しかも12気筒だ。自分で買ったりすれば相当に苦労することになるだろう、と言い聞かせつつも、クラシック・ワークスに頼んで完璧な車体を都合してもらえば?、などと”悪魔の囁き”も聞こえてくる。いずれにしても、大枚が必要なことだけは間違いない。
ちょっと緊張しながら華奢なステアリングホイールを握りしめ、頼りなく立っているシフトレバーを動かし、右足にゆっくりと力をこめたなら、仕方なくという感じでXJC12はしずしずと動き始めた。
ぬるぬるとたぐればたぐるほど湧き出てくる滑らかなトルクフィールがたまらない。12個のピストンが際限のないトルクを供給する。アイドリングではエンストかと思うほど静か。中立のはっきりとしないステアリングフィールはクラシックカーそのものであるにもかかわらず、ひとたび舵角を決めたなら自信をもってカーブを駆けぬけていける。中速域の乗り心地もまた素晴らしい。
なるほどジャガーは英国のカントリーロード生まれなのだ。