三菱が考えているSUVらしさとは、スタイルだけではなく、オンロード以外も走りたくなる、走れるオールマイティな走行性能と、人を乗せ、荷物を積んで出掛けられる実用性を両立させていることにある。そう、ジープ、パジェロからのこだわりだ。
シートやラゲッジはスペースをしっかり確保(写真5枚)
そのスタイリングはCピラーを前傾させたクーペスタイルを採用し、前傾スタンスであるウェッジシェイプを組み合わせたもので、実用性を犠牲にしているように見えるかもしれない。しかし、気になるリアシートはクラストップレベルとなるレッグスペースやスライド量を誇り、ヘッドクリアランスも不足はなく、むしろ居心地の良さすら手に入れているほど。
ラゲッジスペースは、リアシートを最前までスライドさせた状態(5名乗車)で約448リッターを確保し、また、リアシートを最後方から60mmさせた状態でも9インチのゴルフバッグを横積み4個を実現するなど、スタイリッシュなフォルムからは想像できない実用性をもっている。いうまでもなく、ついつい多くなってしまうキャンプ用品、マウンテンバイクをはじめとしたアウトドアギアは難なく積み込み可能だ。

エクリプスクロスが優れているのはこれだけではなく、S-AWCコンセプト(4WDのみ)によって、走りに愉しさと安心感があること。つまり、走りがいい。そもそも、このプラットフォームはコストが掛けられて設計されており、いずれのモデルも走りから乗り心地までひとクラス上を感じさせることを特徴としていた。そして、2世代目アウトランダー開発時にはチューニングが施されて、質感まで大きく高めている。
結果、タイヤをしっかりと路面に接地させ、そしてそのグリップ力を最大限に生かしながら、操縦性と走行安定性をハイバランスさせており、このクラスのモデルとしては異例とも言えるクオリティの高さを誇る。タイヤのグリップ感が明確であるがゆえに、コーナーでもステアリングをどのぐらい切り足していけるかも判断しやすく、つまりは操縦性に対話性が存在するという愉しさが生まれている。もちろん、電子制御による導きもあるが、それは安易に理想のラインをトレースさせるのではなく、ドライバーがどのように走っていきたいか、コーナーを駆け抜けたいかを判断し、そして理想のラインを提供してくれるもの。そのフィーリングは実にナチュラルであり、無理がない。そして、ウェット路面はもちろん、特にスノードライブではついついハイスピードになってしまうほどの安定性と操縦性をバランスしており、とにもかくにも愉しさが強く印象に残る。
エンジンは1.5リッターガソリンターボを採用。CVTを組み合わせているが、ダイレクト感があるし、8速スポーツモード付きパドルシフトも手伝って、愉しさを盛り上げてくれている。その走行性能は、MTで乗ってみたいと思わせるほどのものといえば、いかに愉しいかが伝わるかと思う。ちなみに今後ディーゼルユニットの追加予定があることもアナウンスされている。
走りに愉しさがあふれ、その実用性は、日常はもちろん、非日常にも十分に対応してくれる、まさにオールマイティに使えるSUV、それがこのエクリプスクロスなのだ。
文/吉田直志 編集/iconic