だがワインディングを攻めるより、XC60が得意とするのは高速巡航だろう。視覚的にも触覚の面でも、柔らかで優しい雰囲気のインテリアに包まれて、ディーゼルのビッグ・トルクに身を任せられる感覚は、きわめてシームレスで、ボルボ独自の調和といえる。さらには国産車と輸入車を含めてトップレベルにあるADAS(自動運転支援システム)制御が滑らかなこともあり、こと長距離移動での疲れ・ストレスの少なさに関して、XC60 D4は飛び抜けて優秀な一台といえる。
インテリアとシートをチェック(写真2枚)
またXC60の美点として、主張がないわけではないが、凝り過ぎたプレスラインや面成型を用いていない、抑制の効いた外観も挙げておく。不必要に攻撃的であることを意図的に避けているかのようなデザインは、とりあえず速そうで猛々しいとか、大きくて快適そうだがいかついとか、凝っているが自家薬籠中のものになっていないディティールといった、昨今の新車の過剰表現ぶりに対し、距離を置いている。引き算ができるがゆえの賢さ、それが滲み出た一台だ。
ちなみに車両価格についても、ボルボはXC60 D4についてはガソリンのT5と同じとした。以前なら、ディーゼル車はガソリン車より価格が高く設定されていたため、数万キロを余分に走らないと元が取れなかったが、その障壁が取り払われたのだ。ディーゼルの「市民権」が日本でどのように進展するか、XC60 D4は新たな試金石といえる。
文/南陽一浩 撮影/柳田由人 編集/iconic