
G350 d ヘリテージエディション
もう一方のGクラスの最終限定車「G350 d ヘリテージエディション」は、国内463台の限定モデルだ。ボディカラーはクラシックな5色が用意されており、試乗車はプロフェッショナルブルー(元の名はチャイナブルー)だった。
6月にGクラスの新型が登場したが、この旧型の人気も高く、また新型のディーゼルモデルの導入が遅れることもあって、日本では新旧併売という異例なかたちが取られる。
「G350 d ヘリテージエディション」のディテール(写真5枚)
「G350d」が搭載するのは、最高出力245PS、最大トルク600Nmを発揮する3リッターV6ディーゼルターボエンジン。鉄の塊であるGクラスのボディをぐいぐいと前へ進める。運転席からの眺めは約40年間変わらない特徴的なものだ。四角く真っ平らなガラスがすぐ眼の前にあって、視界はとてもいい。大型のフェンダーなどを備えたことで全幅の数値は1860mmまで拡大しているが、実際は1800mmにも満たないスリムなボディだ。悪路での大きな入力を想定したスローなステアリングのギア比ゆえ、いまのクルマのようにクイックに曲がるわけではないが、慣れてしまえば取り回しも悪くない。
力強く美しいリアデザイン(写真2枚)
ガチャンと特徴的な音をたてて鉄のドアは閉まる。40年をかけて少しづつ熟成された乗り味は、独特のものだ。お世辞にもほかのメルセデスのSUVより乗り心地がいいとはいえないが、しかしどのモデルよりも優れた本格的な悪路走破性をもっている。その性能を使うかどうかは別にして(というか多くの人は使わないだろうが)、このクルマだけがもつオーラは、このカタチと、この性能の両方があってのものだ。旧型となったGクラスは、まさに生けるネオクラシックカーなのだ。
文/藤野太一 撮影/河野敦樹 構成/iconic