
水平基調の代表的なものといえばビートルの後継車として1974年に登場した、初代ゴルフだ。イタリアの工業デザイナー・ジウジアーロの手がけたこのモデルは、エンジンを前方に配置し、前輪を駆動するFF方式を効率的にパッケージした傑作車として今に語り継がれている。
VWゴルフのデザインを振り返る(写真3枚)
初代ゴルフは、ある意味でホンダの創業者、本田宗一郎氏のクルマ作り思想「マン・マキシマム・メカ・ミニマム(人のためのスペースは最大に、メカニズムは最小に)」を具現化したものとも言えるが、VWは時代に合わせてそういったモデルを作り続けてきた。
1998年に登場したルポやその後継として2011年に登場した「up!」がまさにそれだ。「up!」を手掛けた当時のVWグループのデザイン責任者、ワルター・デ・シルヴァ氏は来日した際に「装飾を省いた、できるだけシンプルなものを目指した」と話していたが、現行型の7代目ゴルフでも、そのシンプルさが貫き通されている。
ルポとUP!(写真2枚)
一方でデ・シルヴァ氏はシロッコのようなクーペも手掛けた。全体は水平基調としながら、テールまわりに曲線を取り込んだ躍動感のあるデザインはいかにもスポーツカーらしいものだった。

2015年にVWグループのデザイン責任者がデ・シルヴァ氏からマイケル・マウアー氏へ変わった。元ポルシェのチーフデザイナーとして911をはじめパナメーラ、918スパイダーなども手掛けており、スポーツカーのデザインに長けた人物だ。水平基調を貫いてきた近年のVWデザインに少しづつ変化が生まれてきた。