ロングセラーの今を読み解く
ITALIAN LUXURY イタリアの贅沢名品
誰しも憧れるイタリアを代表するラグジュアリーブランドの名品。長く愛されてきたそれらの逸品が今、様々な進化を遂げている。ブランドの哲学を体現するアイコニックな名品たちの現在を覗いてみよう。
GUCCI
グッチのホースビット ローファー
グッチの象徴である「ホースビット ローファー 1955」はなんとこの10月で70周年を迎えるという。スタイルを問わず愛されてきた名靴の現在地とは? クラシックでありながら常に今を見据えた、その進化に注目。

ドレッシーとカジュアルの垣根を超えた名靴
言わずと知れたグッチの大名品である「ホースビット ローファー 1953」が、この10月で70周年を迎える。クラシコからアメリカントラディショナルな着こなしまで、スタイルを問わずに合わせられるこの名靴は、グッチを象徴するアイテムとして世界中のウェルドレッサーたちに愛用されてきた。
ホースビットモチーフは、1953年にアルド・グッチがローファーの装飾のために考案したもので、2つのリングとバーからなるデザインは馬具のくつわの形状にヒントを得たもの。以来、ブランドストーリーやコミュニティの象徴として、70年以上にわたり繰り返し再解釈され、ハードウェアやモチーフとしてグッチのアクセサリーやジュエリー、ウェアにあしらわれてきたのだ。
1980年にはファッションデザインの規範としてメトロポリタン美術館の永久所蔵コレクションに加えられるなど、グッチを語るうえで欠かせないものとなっている。
そんな同ブランドのオリジンともいえる「ホースビット ローファー 1953」は現在どのような進化を遂げているのだろうか。昔ながらのオーセンティックなモデルの展開は続けつつも、ホースビットモチーフを現代のファッションにマッチさせた様々なデザインの靴も展開されている。

例えば左の靴の写真を見て欲しい。こちらはなんとコーデュロイ素材をアッパーにあしらうことで、今までにないホースビット ローファーの表情を獲得している。元々はカントリー由来で野暮ったい印象になりやすいコーデュロイも、この名モデルと組み合わせるとエレガントな素材へと様変わりする。ホースビットモチーフや、グッチカラーのグリーン・レッド・グリーンのリボンのあしらいが、カジュアルなコーデュロイを格調高い印象へ変貌させているのだ。
また、右写真のレザーのモデルは、このアイコニックなモチーフが大胆にアレンジされている。オールレザーのモカシンシューズに、ホースビットモチーフをミニマムなアクセントとしてあしらうことで、よりドレッシーな中に潜む遊び心が感じられる。
このようにアレンジを加えられた両モデルを見てみると、ドレッシーとカジュアルの境界がなくなりつつある、現代の装いにマッチするシューズであることがわかる。70年以上愛され続けた歴史的名作は、これからも革新的な進化を続けるだろう。

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[MEN’S EX Autumn 2023の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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