
美食大国、香港は昼と夜「二つの顔」を賢く使い分ける
食べ歩きが楽しい香港旅。コンパクトな街とはいえ、グルメと観光を効率よく行き来しながら時間的なロスを少なくした方が、限られた滞在もより充実したものになるはず。
昼間の観光をアクティブに愉しみたいなら、ランチはカジュアルな方がフットワーク軽く動ける。その代わりに、ディナーはゆったりと落ち着いたファインダイニングで一流シェフの料理に舌鼓を打つ。
あるいは、せっかくのバカンスなのだから、ランチこそ優雅にコース料理とお酒をゆったりと堪能する時間も捨て難い。そんな日のディナーはカジュアルに済ませて、夜の街歩き時間を充実させたいところ。旅のプランに合わせて、あれこれと自由に組み合わせながら愉しんでほしい。
【大人の週末旅】vol.01 コロナ明けの海外は最新の「美食&アート」で巡る近場の香港旅から!
手軽なカジュアルランチは昔ながらの「茶餐廳」に限る!

オールド香港らしい油麻地のごみごみした界隈を抜けると、控えめに佇む看板が見える。香港でも今となってはそれほど多くない「茶餐廳」(広東語でチャーチャーンテーン)と呼ばれる喫茶、軽食を兼ねた昔ながらの飲食店は、お気軽ランチにはぴったり。

1960年代に創業したという「大安茶冰廳」は、ブランド店が軒を連ねるキラキラとした尖沙咀あたりの広東道とは違って、ちょっと地味な下町通りに店を構える。昼時になると地元住民や観光客らが食事や休憩にやってくる。ワンプレートの手軽なランチセットをサクッと食べて、市内観光へと繰り出そう!


Instagram: @taion_coffee_and_tea
街歩きに疲れて小休止、スイーツでチャージするならコチラ!

市街地を散策して少し疲れたので、どこかで休憩を取りたい。そんな時には、中環のセントラルロード沿いにショップを構える「當文歴餅店 by Dominique Ansel」を訪れてほしい。その訳は、子供の頃に食べた、あの懐かしのお菓子を何とケーキで味わえるから!レモンジュースのパッケージ形のケーキにコアラのマーチやアポロチョコ、さらにはカップ麺まで! フランス人のパティシエ、ドミニク・アンセル氏が手掛ける上品な甘さのスイーツでエナジーチャージを。インスタ映えもしそうなので要チェック!
Instagram: @dangwenlihk
優雅なディナーは、香港島の2軒をおさえるべし!
ミシュラン星つきの絶品フレンチから本場の広東料理まで、美食の街、香港には有名店がズラリ! 多彩な調理法で引き出された食材のうまみを、見た目の美しさとともに存分に堪能できる、香港に来たら外せない“夜の顔”を要チェック!
【ココは外せない!】
ミシュラン3つ星を獲得したフレンチ×和の融合「Ta Vie」

香港で今、舌の肥えたグルマンたちが集う最も勢いのあるフレンチレストランが、香港島の中環にある「ta vie 旅」だ。2015年のオープン以来、この店を率いているのが、長野県出身の日本人シェフ、佐藤秀明さん。実はこちら、今年の4月に発表された「ミシュランガイド香港・マカオ版2023」にて、昨年の2つ星から見事に3つ星に昇格したことで話題を浚った。佐藤シェフはフレンチの世界で10年以上腕を磨いたのち、日本料理を学ぶために、名店「龍吟」に弟子入り。すると、すぐに頭角を表し、2012年「龍吟」が香港へ進出した際、「天空龍吟」のオープニングシェフに抜擢された実力の持ち主なのだ。
「香港は、日本各地からの輸入も含めて、鮮度の良い魚介類が豊富に揃う美食大国です。本日のメニューにも、北海道利尻のバフンウニや毛蟹、浜名湖の青海苔、愛知の本ミル貝など、和の食材をふんだんに取り入れています。野菜や果物に関しては、私が毎朝、地元のマーケットに足を運んで仕入れた、朝採れの新鮮なオーガニックのものを使用しています。旬の食材にあわせながら、3ヶ月に一度くらいのペースでメニューをローテーションしています」(佐藤さん)






鮮度の高い魚介類を厳選して仕入れていることはもちろん、その上品で洗練された味わいからは、魚介類の下処理をはじめとしたその扱い方など、繊細な日本料理にも通ずる丁寧な仕事ぶりがうかがえた。地場の野菜や果物、そして日本各地やフランスなど、世界中から食材が集まる香港ならではの土地柄を活かした、目にも美しい優雅なフランス料理。日本では味わうことのできない、「フレンチ×和」の融合に感動を覚えた。
URL:
https://www.tavie.com.hk
Instagram:
@ta_vie_hk
【ココは外せない!】
ゆったりと腰を据えて味わいたい優雅な広東料理「壹玖捌叁」

競馬場がある街として有名なハッピーバレーは、閑静な高級住宅街としても知られ、そこに住む香港人だけではなく、セレブたちがお忍びで集う有名レストランがひっそりと軒を連ねる。そんなハイソな街の一角に隠れ家的に佇む広東料理店がこちら。階段を上って室内に入れば、白いテーブルに落ち着いた照明のエレガントな空間が広がる。


青島ビールで乾いた喉を潤していると、程なく運ばれてきたのがこちらのフォアグラ入りのエビ蒸し餃子。黒トリュフの風味とエビの食感が絶妙なハーモニー。

続いて、半熟卵の黄身の塩漬けをつぶしたタロイモで包んだ揚げ物。サクサクの食感の後からやってくる、ねっとりとした半熟卵の舌触りが面白い。上品な酸味が爽やかな冷えた白ワインとの相性も◎。そして、素揚げされた沢蟹の目線の先には、蒸した卵白に蟹肉入りの殻が。目にも楽しい一皿だ。




高級食材を豪快に使い、大胆な発想で調理する、まさに香港キュイジーヌの本領が愉しめる。香港ならではの美食を、美酒とともに優雅に堪能したい。そんな夜は迷わず「壹玖捌叁」を予約してほしい。
URL:
https://www.facebook.com/1983hkcuisine
Instagram:
@hongkongcuisine1983
【バカンスだけにランチ重視!】
伝統中華のコースランチで「広東・四川・上海」を全網羅!


中国各地の伝統料理をモダンにアレンジした、新しい食体験を楽しみたい方に是非、足を運んでもらいたいダイニングがこちら。19世紀に建てられた旧セントラル警察署内の建物を「歴史とアートの発信地」として生まれ変わらせたという、大館にある中華料理レストラン「ザ・チャイニーズ・ライブラリー」。
建設当時の面影を残しながらも、モダンにリノベーションされたエントランスを抜けて2階に上がると、華やかなダニングスペースが迎えてくれる。大理石やシャンデリアなど、外の喧騒とは異空間なゴージャスな雰囲気は、とにかく食事前から期待感でテンションがあがること間違いなし!




どの料理にも一工夫あり、最先端の香港キュイジーヌを存分に体験できた。少々早めの入店から全9品のコースを堪能し、席を後にする頃には、飲茶ランチを愉しむ香港マダムたちで大賑わい! 会話も飛び交い、店内は活気に満ち溢れていた。インテリアも大変すばらしく、次回、ディナー再訪への期待感に胸を躍らせた。
URL:
https://www.chineselibrary.com.hk/reservations/
Instagram:
@thechineselibrary
【夜遊びに備えてディナーはサクッと!】
香港発のクラフトビール&地元メシを「何蘭正」で!

香港一の繁華街、夜のSOHO散策前に、サクッと腹ごしらえをするなら、こちらのクラフトビアバー「何蘭正」がぴったり。ここは他店ではなかなかお目にかかれないような、香港発によるレアなマイクロブルワリーのクラフトビールが実に豊富に揃っているのだ。湿度も高くムシムシの夏の香港では、ビールもまた格別に美味い!


古き良き香港レトロなネオンがどこか怪しげながらも、不思議と落ち着くインテリア。フレンドリーで、ビールの知識が豊富なスタッフたちが迎えてくれるアットホームな空間で、こだわりの一本を堪能できるとあって、地元の若者たちで連日大賑わい。
ビールラヴァーの心をがっちり掴んでリピーターも多く、早めの来店は予約なしでも立ち寄りOKかもしれないが、19時以降のディナータイムは予約必須。何を飲むか迷ったら、写真の店員さんにおすすめをひと口ずつ試飲させてもらおう!


大皿料理を取り分けながらカジュアルにワイワイ食卓を囲むスタイルに。スパイスの効いたローカルフードの味わいは、いずれもクラフトビールにぴったり!
URL: https://www.facebook.com/HoLanJeng/
香港は22時過ぎまで開いている店も多いので、夕食後は腹ごなしにショッピングを楽しむのも良い。もしお酒をもう少し嗜みたいなら、バー巡りも面白い。この辺は、日本でいう六本木的なエリアにも近い。香港は夜景がキレイなバーも多く、そうしたバーは少し料金が高いことから、騒がしい客が少ないそう。活気に溢れる街場も良いが、摩天楼を眺めながら高級バーで味わうお酒の味もまた、香港らしいひと時になりそうだ。

今、香港でカクテルを味わうベストな一軒がコチラ!

活気に満ち溢れた夜の街を堪能した後の締めの一杯は、しっとりとした雰囲気の中でカクテルを味わいたい。そんな時こそ、フォーシーズンズホテル香港のメインバー「アルゴ」へ。こちらは、先頃開催された「アジアのベストバー50 2023」において第8位を獲得した、今香港で最も話題のカクテルバー。目の前に広がるハーバービューを眺めながら味わうドライマティーニはまた格別な一杯になるはず。
URL: https://www.fourseasons.com/hongkong/dining/lounges/argo/
ココはまるで南国のビーチリゾート!?
家族でも寛げる安心の滞在は「ケリーホテル香港」で叶える

九龍半島の尖沙咀の東、紅磡にある「ケリーホテル香港」。「ケリーホテル」と言われても、日本人には馴染みの薄いホテルだが、実は「シャングリラ・ホテルズ&リゾーツ」のラグジュアリーブランドで、ここ香港は、上海、北京に続き、世界で3番目の施設として2017年にオープンしたのだ。既に中国本土では知名度が高く、夏休み中ということもあってか、本土から訪れた家族連れや観光客で大いに賑わっていた。
摩天楼広がる香港にあって、ケリーホテルでの滞在は水辺を存分に感じられるせいか、どこか南の島にいるようなリゾート気分を味わえるのが魅力の一つ。市内観光へ出る前の朝食の前後など、子供たちとプールで楽しい時間を過ごす家族連れの姿を多く見かけた。



客室も全546室のうち、実に6割以上がビクトリア・ハーバービュー。標準となるデラックスルームのカテゴリーは42m2以上、その上のプレミアルームはさらに広く52m2以上。荷物が多かったり、子連れ旅だったりしても十分なゆとりを感じることができる。バスルームも香港では珍しいシャワーブースとバスタブがセパレートされている。

客室が広い分、繁華街や地下鉄駅からは少し離れた静かなエリアにあるが、九龍駅からホテルまではシャトルバスも運行していて、ホテルから最寄りの駅や繁華街まで出かけるときも、タクシー移動を前提に計画すれば、静かな環境でゆっくりとリラックスできる施設になっている。
URL: https://www.shangri-la.com/tc/hongkong/kerry/
「ケリーホテル」は、実は飲茶ランチも絶品!


せっかくプールもあることだし、午前中はホテルでゆっくりと過ごし、施設内で軽くランチを済ませてから観光へ出かけたい。そんな時には、レストランから見えるハーバービューが最高なホテル内の「紅糖」へ。景色はもちろん、伝統的な広東料理をモダンにアレンジしたその味は、素晴らしいの一言! これなら、午後の観光を早々に切り上げて、じっくりディナーを味わってみたくなってしまったほど! これだけのロケーションで、これだけの味の店を見つけるのは至難の技だ。しかも、滞在中のホテルともなれば、帰りの心配は無用。さすがは5つ星ホテルにふさわしいクオリティの高いダイニングだ。
[取材協力]
香港政府観光局
DiscoverHongKong.com
キャセイパシフィック航空
https://www.cathaypacific.com/cx/ja_JP.html
取材・構成・文=伊澤一臣