
1884年のヴィクトリア女王以来、英国王室御用達とされ、世界で最も知られたスパイ、ジェームズ・ボンドが愛飲するシャンパーニュ「ボランジェ」。その創業は1829年にさかのぼる。シャンパーニュ地方のアイ村にジャック・ボランジェによって創設されたメゾンは、創業以来の一族経営を続け、今なお、オーク樽による一次発酵やカーヴでの長期熟成など、伝統的な製法を守り継ぐ世界でも稀有な存在だ。

そんなボランジェのシグネチャーであるR.D.(アール・ディー)から最新のヴィンテージ2008がリリースされた。“Récemment Dégorgé (レサマン・デゴルジェ)”の略であるR.D.はその名の通り、デゴルジュマン(澱抜き)したばかり、という意味である。ボランジェを3代目から引き継いだマダム・リリー・ボランジェによって発案され、1952年のヴィンテージを1967年にリリースしたのがR.D.の始まりである。当時、シャンパーニュを熟成させて飲むという文化がなかった時代に、まさに画期的な味わいを発明し、同時にR.D.というシャンパーニュのスタイルを確立したのであった。
瓶内で可能な限り長期にわたり澱とコンタクトさせ、熟成させることで、シャンパーニュの味わいにはいっそうの深みと複雑味がもたらされる。一方で、出荷直前にデゴルジュマンすることで、熟成感のなかにも生き生きとしたフレッシュ感を兼ね備えるのが、R.D.のユニークな点でもある。

今回のリリースに際して来日した、ボランジェのグローバルセールス・ディレクターのギィ・ド・リヴォワール氏はR.D.2008を以下のように評す。「R.D.2008のキーワードは『大胆さ』と『華やかさ』です。14年という長期にわたって澱とともに熟成したシャンパーニュにもかかわらず、驚くほどフレッシュな味わいをそなえるという大胆な発想を体現し、そして、複雑なアロマと洗練された素晴らしさを味わっていただきたいですね」

熟成感とフレッシュさ、その2つの相反する要素を内包した味わいはまさに唯一無二の存在といっても過言ではない。それに加えて、R.D.2008には芳ばしいトースト香とヘーゼルナッツのニュアンスが感じられる。
「香りのニュアンスはもちろん、ヴィンテージによって変わってきます。2008年というヴィンテージはブドウの成熟がうまくいき、非常に優れたヴィンテージとなりました。香りにはヘーゼルナッツ、それもピエモンテ産の上質なヘーゼルナッツの香りを感じ取っていただけると思います」とリヴォワール氏は解説する。
R.D.がリリースされるのは、上質なブドウが作られた時のみである。特に2008年は寒暖差のある気候に恵まれ、凝縮感のある果実が育った年なのだ。通常シャンパーニュの製法で定められている熟成期間の4倍以上もの時間をかけて瓶内熟成され、デゴルジュマンされた後は約2~3ヶ月でリリースされる。デゴルジュマンされた日付がラベルに記載されるのも、シャンパーニュ史上初のことである。

「R.D.らしさを味わっていただくのであれば、デゴルジュマンされた年に開けていただくとよいと思います。複雑な果実味が楽しめます。しかし、リリースされたのち、数年さらに熟成させていただくと、シャンパーニュの持つ香りに深みが増し、いっそうこのヴィンテージの偉大さを感じていただくこともできると思います」とリヴォワール氏。当日は1997年にデゴルジュマンされたR.D.1985もサーブされ、R.D.の偉大な味わいに圧倒されたのだった。
ボランジェというメゾンのスタイルを大胆な発想で確立したマダム・ボランジェの想いを受け継ぎ、いまなお、変わらぬ製法でその革新的な味わいを現代に伝えるボランジェのR.D.。その大胆にして華やかな味わいは、時間という魔法が生み出したシャンパーニュの”軌跡”ともいえよう。

ピノ・ノワール71%、シャルドネ29%を使ったR.D.2008。メゾンのアイコンであるピノ・ノワールの比率が高いのも特徴だ。使用するピノ・ノワールはアイ村とヴェルズネイ村のものが中心。シャルドネはル・メニル・シュール・オジェ村とクラマン村がメインだ。柑橘、ヘーゼルナッツや蜂蜜などの複雑なブーケと味わいが特徴。5万6000円(税別)
シャンパーニュメゾン・ボランジェについては https://www.champagne-bollinger.com/en
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