
時代を造ったクルマたち vol.05
イノベーティブを追求した歴史に残る名車
1970年代後半のスーパーカーブームにおいてはランボルギーニ カウンタック、フェラーリ512BB、ポルシェ 930ターボといったスター達が人気を博した。一方でマセラティ ボーラやメラクといったある種、地味なキャラクターのクルマ達にはマニアックなファンが付いていた。ではデ・トマソ パンテーラはどうだったか?

そう、このクルマは何か悪役キャラというか、ワルなイメージが付いてまわった。ブームの頃は“直線番長”と呼ばれることもあったようだ。トルクが太い大排気量エンジンを搭載したドラッグレーサーのようなイメージから名付けられたのだろう。
実はあるプロジェクトで「直線番長」と大きくバックプリントしたTシャツを作り、イタリアのデ・トマソ・エンスーにプレゼントしたのだが、これは大うけであった。「さすが日本人はキャラクター化が上手い。マンガの国だからね」と。いずれにしてもパンテーラという存在がイタリア産大排気量スポーツカーの中では異端であった。これは日本に限らずだ。
近年でこそパンテーラはヨーロッパで評価されてはいるものの、かつては散々であった。クルマ自体の評価云々というより、そもそもヨーロッパでパンテーラを目にすることは皆無であったから、まず存在感がなかったのだ。さらにデ・トマソ社のオーナーであるアレッサンドロ・デ・トマソはメディアにむけてのサービストークなど無縁のワガママオヤジであったから、ブランドのファンも変わり者が多かった(失礼)。しかし、デ・トマソのヒストリーにおいてパンテーラが最も重要な存在であるのはもちろん、保守的なイタリア・スーパーカー業界において、とんでもなくイノベーティブな試みが追求された歴史に残る名車であると筆者は考える。