「BMW i」のフラッグシップたるSUVのiXが上陸

BMWらしい先見性で時代を先取りした「iブランド」
ドイツプレミアムブランドのなかでもいち早く電動モデルの量産化を成し遂げていたのがBMWだった。2008年にプロジェクトiを始動させると、’11年には「BMW i」を正式にローンチ。i3という画期的なメガシティビークルを発表したのだ。
i3、そして続くスーパーカースタイルのi8には電気モーター+バッテリーのフル電動、もしくはそれに小排気量のガソリンエンジンを組み合わせたハイブリッドのパワートレインが積まれていたが、それ以外にもアルミニウム製シャーシを使ったユニークな専用アーキテクチャーを採用したり、生産システムにもカーボンニュートラル思想を取り入れたりするなど、未来を先取りするブランドとしてその名を世界に轟かせた。
斬新なアイディアとデザインを採用したBEV
10年後。BMWはSUVスタイルのiX3や美しい4ドアクーペスタイルのi4を発表。BMW iはサブブランドの範疇を超えて次世代を担う革新的存在へとその立場を固めつつあると言っていい。
そんなBMW iのフラッグシップとして君臨するモデルがiXである。全長は5m近く、ホイールベースも3mというから堂々たるサイズだ。車名にXが入るためSUVの範疇だが、いかつさや泥くささはなく、どこか新種のカテゴリー感が漂っている。シンプルな面で構成されたエクステリアデザインもそう思わせる要因だろう。
何よりフロントマスクのデザインが独特だ。キドニーグリルはかつてないほどに縦に長くなった。とはいえこれはBEVである。エンジン車のように空気を取り入れるためのグリルなど要らないはず。ところがキドニーグリルなくしてBMWデザインはもはや成立しない。そのためiXでは裏に最新モデルに不可欠な装備類、カメラやレーダー、センサーなどを配置するインテリジェンスパネルとすることでキドニーグリルに新たな機能的使命を与えたのだった。
ドアを開けた瞬間から新しい!と叫びたくなるインテリアもiXの見所の一つ。ハイバックシートやセンターコンソールはモダンファニチャーのようで、巨大なコクピットディスプレイはさしずめラウンジモニターか。横長のカーブドディスプレイはBMWの伝統に則りドライバーオリエンテッドとされている。ステアリングホイールも個性的な六角形。その他スイッチやレバーなどの操作系ディテールも一つ一つが極めてモダンにデザインされており、これまでのクルマ用機能部品とは一線を画する雰囲気だ。
グレードは3種類、パフォーマンスは2種類を用意。いずれも前後に電気モーターを備えた四輪駆動モデルで、xDrive40はシステム総合出力326PS、xDrive50では同523PSを誇る。停止状態から時速100km/hまでの加速性能こそ後者でも4・6秒と“目を見張る”ほどではないが、そこは単に加速性能の数値だけを追い求めるのではなく、BEVにおける真のラグジュアリーパフォーマンスを目指したということだろう。