スポーツ界全体に影響を及ぼしたコロナ禍。本連載では、これまでオリンピアンをゲストに迎えてきたが、今回は特別編として2020年の男子ゴルフ界を丸山茂樹さんに振り返っていただいた。2020年、丸山さんの心に残った次世代を担う選手達とは。そして、これからのゴルフとは。
【Fun for Win】特別編
東京五輪ゴルフ日本代表ヘッドコーチ 丸山茂樹が語る
2020年、心に残った男子選手&2021年への期待[前編]

丸山茂樹さん MARUYAMA Shigeki
1969年生まれ。千葉出身。日本ツアー通算10勝。2000年より米ツアーに参戦し3勝。2002年には伊澤利光プロとのペアでゴルフワールドカップを制する。東京五輪ではリオ五輪に続き、ゴルフ日本代表のヘッドコーチを務める。愛称は“マルちゃん”。
「数少ない機会の中で、トーナメントを開いていただけたことに感謝」(丸山さん)
コンビネーションを大事にできる選手は上位に来ます!
M.E. 2020年の前半はコロナ禍の影響で各ツアーやトーナメントが中止になりました。9月からようやくフジサンケイクラシック、10月から日本オープンゴルフ選手権競技など国内ツアーが再開されました。丸山さんも感慨深いものがあったのではないでしょうか?
丸山 そうですね。非常に厳しい社会状況の中で、開催していただいたトーナメントに関してはありがたいなと思います。特に男子の試合は少なかったですから。きっと、選手達も同じ気持ちではないでしょうか。
M.E. その中で、印象に残った選手はどなたでしょうか?
丸山 国内選手で安定感のある選手といえば、今平周吾選手ですね。今平選手は松山英樹選手とジュニア時代から一緒に闘っているのを見ていたので、基本情報はありました。非常にショット能力が高い選手だなとは思っていましたよ。日本ツアーに出場したての頃は、ショートゲームで苦戦しているようにも思いましたが、今はそれも改善されてきました。普段から言っていますが、ゴルフはドライバー、アイアン、アプローチ、パターというコンビネーションが大切。今平選手の場合、ここ数年でグッとそのバランスが良くなってきた印象を受けます。その結果が、2年連続賞金王という結果に繋がっているのでしょう。
丸山さんが注目する《次世代選手-1 》 今平周吾さん
「持ち前のショット能力に加えて、バランス力がついてきました」


今平周吾さん IMAHIRA Syugo
1992年生まれ。埼玉県出身。埼玉栄高校1年時の2008年『日本ジュニア』で松山英樹らを抑えて優勝し、翌’09年に渡米。IMGゴルフアカデミーで2年間腕を磨く。帰国後、’11年にプロ転向。’18年、’19年と賞金王を獲得し、史上5人目となる2年連続賞金王の偉業を達成した。
M.E. 今の時代、選手のプレースタイルはどんどん変化しているようにも思いますが、いかがでしょうか?
丸山 ここ最近の選手は、非常にドライバーを打つ能力が高いですね。やっぱり、子どもの頃から大きなメタルウッドでゴルフの練習ができる環境で育ってきていますからね。ドライバーは非常に上手いんです。ただ、ドライバーからアイアン、アプローチ、パターになるに従ってしりすぼみしていく選手が多いのも事実。
M.E. なるほど。先ほどおっしゃっていたコンビネーションですね。
丸山 そこのバランスが圧倒的によかったのが、松山選手。それでも、アプローチに不安が残るところがあって、以前、アプローチについて相談されたことがありました。それが今はもう、何もアドバイスすることがないほどの実力をつけていますけどね(笑)。でも、そのアプローチの能力が上がったからこそ、今の彼があると僕は思っていますよ。ドライバーやアイアンが注目されがちですが、彼のアプローチの能力は凄いですね。あれは練習の賜物だと思います。
M.E. そうしたアドバイスやレッスンをされる際は、どのようなことを心がけておられるのでしょうか?
丸山 僕はずーっと観てる派。レッスンでは、まずその人のことを知るために1時間くらいじっくり観察します。で、そこから本格的に分析してレッスンして。ポイントを言うのは簡単だけど、ちょっとずつ小出しにしていきます。ですから僕のレッスンを受けるには体力が必要ですよ(笑)。