「一歩先の王道」好きを魅了するエルメスの服

エルメスが馬具工房として誕生したことは周知のとおりだが、同社がトータルメゾンへ躍進する最初の契機となったのは、馬具作りの技術を応用して革製品の製作を始めたことだった。当時は自動車社会黎明期。この新しい乗り物が近い将来、馬車に取って代わることを予見したためである。それまでに培ってきた伝統に則りつつ、未来を見据えた発展を常に模索する。いわば「一歩先の王道」を希求する姿勢が、エルメスを世界的メゾンへと導いたのである。
その精神は、現在のコレクションにも息づいている。写真のシャツは、ドレスの王道であるコットンポプリン製。しかし襟羽根をボウタイのようにデザインすることで、首元に全く新しい表情をもたらすことに成功している。シンプルでいて、実に革新的な提案だ。
辞書によると、王道という言葉は“近道”という意味ももつ。一点投入で装いを一新するエルメスを着ることは、最短距離で「一歩先」を実現する最善手でもあるのだ。