大人の日常生活は、微妙なピンチの連続です。適切な言い訳を繰り出して、自分を守りつつ周囲のストレスを最小限に抑えましょう。

今月のテーマ/妻が「これ素敵じゃない」と趣味を押し付けてきた・・・・・
秋冬物を探しに夫婦でお出かけ。行きつけのショップで、妻がハンガーに吊るされたジャケットを持ち、弾んだ声で「これ素敵じゃない。きっと似合うわよ」と勧めてきました。しかし、色といい形といい風合いといい、まったく好みではありません。
ここで曖昧な態度を取ると、着たくない服を買う羽目になります。自信満々の提案を却下するには、どんな言い訳を繰り出せばいいのか。
素直に「俺の趣味じゃない」と言ってしまうのは危険。妻に「キミは趣味が悪い」と言っていることになり、妻の性格や虫の居所によっては深刻なケンカに発展しかねません。「好みじゃない」も、人格を否定したと受け取られる可能性がある危険ワードです。
まずは「お、なかなかいいじゃない。さすがだね」と、妻のチョイスとセンスをホメ称えましょう。ひとしきり満足感を覚えてもらった上で、しばし考えて「ただ、手持ちのパンツとの相性が、いまひとつかな」「ああ、会社の後輩(友人)が似た色のジャケットを着てたかも」など、そのジャケット自体に罪はないけど今回は縁がなかったという流れにもっていきます。
気に入ったジャケットが見つかって買おうとした段階で、妻が「こっちのほうがいいわよ」と待ったをかけてくることもあるでしょう。その場合は、延々と悩み続けて、呆れた妻が「好きにすれば」と言うのを待ちます。そして家に帰って袋から出したときに、小声で「あっちのほうがよかったかな」と呟いておくのが、妻の意見に従わなかったことへの言い訳です。
言い訳の極意
相手のセンスを否定せず、
まったく別の方向から
却下の理由を探してくる――
それもまた言い訳なり

講師
石原 壮一郎さん
1963年三重県生まれ。日本の大人シーンを牽引するコラムニスト。最新刊は『恥をかかない コミュマスター養成ドリル』(扶桑社)
[MEN’S EX 2020年11月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)