“手は口ほどにモノを言う”からこそ
時計を生かすスーツの装い方とは?

時計との一体感ある着こなしは、画一的なビジネススーツにも個性を与え、相手にも自身を強く印象づける武器となる。そこで、本誌の人気連載を振り返りながら、担当スタイリストの四方さんに、スタイリング作りの意図や裏話を教えてもらった。
解説してくれる人
スタイリスト 四方章敬さん
1982年生まれ。武内雅英氏に師事した後、独立。クラシックスタイルへの造詣が深く、時計は、オーデマ ピゲ、パテック フィリップなどを愛用中。
スーツのトレンドを熟知するプロのスタイリングには、参考にしたい技や巧みなバランス感覚がある。
四方これまでビジネス一辺倒だったスーツが、今ではファッション感覚で愉しめるモノに進化してきたこともあって、その素材や色、形が多様化しています。その流れを受けて、スーツに合わせる腕時計のレンジも広がってきています。
M.E. なるほど。スーツだからといって、3針革ベルトのドレス時計だけを合わせる時代ではもうなくなったということですね。
四方ええ。とはいえ、やはりドレスコードを前提としたルールはありますから、その辺を踏まえたスタイリングを心掛けています。
M.E. 確かに、こうして過去の記事を振り返ってみると、その意図が装いにも反映されていますね。
四方クラシックで落ち着きのあるウール系のスーツにはドレス時計。コットンやリネン、柄物など、ややくだけた印象のスーツであれば、ブレス系のスポーティな時計もあり、といった考え方です。
M.E. スーツの素材や色柄などが、時計との合わせの肝になると。
四方例えば、①のように(下の写真参照)クラシックな紺無地スーツには、シンプルな3針のパテックを。逆に、下段写真のように少し遊びの効いたチェックスーツには、華やかなウブロのクロノグラフなどを合わせても、新鮮に見えますよね。
M.E. 因みに、④のスーツはクラシックな無地に見えますが、クロノグラフですよね?
四方実はこのスーツ、少しグリーン掛かっているんです。なので、時計にも遊びを効かせました。
M.E. なるほど参考になります。
四方時計をアクセ感覚で愉しむことがあっても良いとは思いますが、狙い過ぎはかえって印象を損ねることにも。そんな時は、⑥のように、時計の色をタイの色柄で拾うなど、装いのひと工夫が、好印象につながったりします。
M.E. こんな小粋な演出なら腕時計も身につける人の個性として、相手の記憶に刻まれますね。