
ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを連載形式で紹介する「中村アーカイブ」。「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第8弾は……?

【中村アーカイブ】 vol.8 /ブルックス ブラザーズのマドラスチェックBDシャツ

今回は、1992年にブルックス ブラザーズの青山店で購入した、こちらのシャツをご紹介します。中学一年生の頃に初めて着たマドラスチェックのボタンダウン。当時はアイビーの春夏の定番のシャツだったので、その後高校生になっても買い続け、ずっと着ていたのですが、大学生になり上京して様々なファッションに触れると、真面目なアメリカントラッドが古臭く感じ、大学4年間はマドラスチェックのBDだけでなく、ボタンダウン自体も着ることがほとんどなくなりました。
1985年にBEAMSにアルバイトで入社すると、先輩たちが当時まだアメリカ製だったラルフ ローレンやラルフ ローレンのシャツを作っていたアイク ベーハーの綺麗な柄のマドラスチェックのBDを着ていて、久々にとても新鮮に感じました。さらに、マドラスチェックのBDは半袖しか着たことがなかったのですが、長袖をまくって着るというスタイルも新鮮に感じ、それ以降’90年代中頃まで春夏になると何かしらマドラスチェックのBDを買っていました。
’80年代後半くらいから自分がバイイングに関わるようになると、アメリカのブランドを中心に毎春夏マドラスチェックのBDをバイイングして、オリジナルも企画するようになるのですが、同時にブルックス ブラザーズやラルフローレンと言ったアメリカを代表するブランドが、どんな柄のマドラスチェックを展開しているか毎シーズンリサーチするようになります。
そんな中、ブルックス ブラザーズのマドラスチェックのBDが、アメリカ製でありながら当時BEAMSで展開していたインポートブランドに比べても手頃な価格で売られているのを知り、気に入った柄があると購入していました。このシャツは何枚か購入したものの中の一枚で、当時買ったブルックスブラザースのマドラスチェックのBDの中で一番気に入っている柄で、他のものは処分してしまいましたが、これだけはアーカイブとして保管してきました。
昨今はアイビーやプレッピーの流れもあり、BEAMS FでもマドラスチェックのBDを展開し、お客様にもスタッフにも好評ですが、淡いグリーンベースにピンクと言う、今では絶対に展開しないような柄も、’80~’90年代の雰囲気が強く感じられ、おそらく再び着ることはないと思いますが、アーカイブとして残していこうと思っています。