創立75周年を記念し、過去に史上初のメンズショーを行ったピッティで、演奏家たちによる洋服と音楽の競演を繰り広げたブリオーニ。新作への思いをデザイン・ディレクターに聞いた。
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現代を生きる男たちに捧げる快適かつ美しい服
ある部屋ではチェロのデュオ、別の部屋ではピアノソロ、そしてクインテットやカルテット。
フレスコ画や古い調度品に溢れる旧貴族の邸宅の様々な部屋で、2020秋冬コレクションを身に纏った演奏家たちがクラシックの名曲を奏でる……これが今年創立75周年となるブリオーニのプレゼンテーションだ。
デザイン・ディレクターとしてブリオーニを率いるノルベルト・スタンフル氏は洋服の魅力を最大限に伝えつつ、そこにブリオーニのDNA、自身のオリジンを取り入れた。

「今でこそテーラリングの最高峰とされるブリオーニですが、実は1952年に史上初のメンズショーを開催した革新的なブランドで、ショーの演出もかなり凝ったものでした。そんなかつてのブリオーニがやったような特別な雰囲気を味わっていただきたいと思ったのです」とノルベルト氏は語る。
さらに歴史あるブランドとクラシック音楽との共通性や、モーツァルトをはじめ偉大な音楽家を輩出しクラシック音楽にゆかりのある国、オーストリア出身である自分の経験も深く関わっている。
そして「モデルではなく様々な年齢やサイズの普通の人が着ることで、すべての人がブリオーニを自分らしく着こなせるということ、さらに楽器を弾くという動きにもブリオーニの服は美しくフィットすることを見ていただきたかったのです」と続ける。

その秘密は、トータル220、肩だけでも22という細かい工程と、多くの手作業による丹念な作りにある。
アブルッツォ州のペンネという小さな町にあるブリオーニの工場では、現在もマスターテーラーの下で職人たちが伝統の服作りを継承しており、それはノルベルト氏が「これこそがブリオーニ!」と賞賛し、全幅の信頼を置くものだ。
彼は素材のリサーチにも余念がない。例えばジャケットをシャツのように軽く柔らかく仕上げるためにベネチアの17世紀の織機によるウールを使い、ハンドペイントのプリントのために地方の工房を巡ったりしたという。
ラグジュアリーで上質でありながら、快適かつ革命的な服であってほしい―。
これはそれまでモードからクラシックまで様々な世界で経験を積んできた氏がたどり着いた結論だ。
「これ見よがしにデザインを前面に出したくはありません。ブリオーニの服はファッションではなくフィーリングなのです」
―その言葉の裏には、最高の職人技を武器にしたシルエットへの細かい探求と素材へのあくなき追求が隠されている。

ブリオーニ
デザイン・ディレクター
ノルベルト・スタンフル氏
セントラル・セントマーティンズ卒業。アレキサンダー・マックイーンに始まり、ランバン、ルイ・ヴィトン、バレンシアガ、ベルルッティなどの有名メゾンで経験を積んだ後、2018年よりブリオーニのデザイン・ディレクターを務める。