男が求める夢は外の世界にのみあるわけではない。居場所の自邸でこそ味わえる特別な時がある。自身のこだわりを惜しむことなく注いだ夢の空間。そんな場所を持つ男たちに、その実現の極意を聞いた。
Audio Room【オーディオルーム】

自分だけの夢の空間をつくるコツ
(その1)自分の暮らしを検証し、一番寛げる場所をオーディオルームに
(その2)オーディオルームの固定観念を捨て居住性も追求する
(その3)予想を上回る提案に出合うまで、設計者を根気強く探す
“こもらない”オーディオルームが一番の贅沢
会社経営 N氏邸(静岡県)
玄関を入り、ダイニングキッチンを抜けると、吹き抜けの大空間が! N氏邸のオーディオルームだ。
「家を建て替える際、気兼ねなく音楽を楽しめるスペースを作ることを条件に、さまざまなハウスメーカーを訪ねました。そこで提案されたのは、窓のない、狭いオーディオルームばかり。これでは”こもるだけで寛ぐことができない”と思い、発想を転換しました」。
リビングルームをまるごとオーディオルームにしたのだ。住空間を満遍なく心地よく整えた上で趣味のオーディオルームを加えるのではなく、家族全員で寛ぐリビングルームに、予算を集中させたという。結果は、大正解。
「以前は仕事漬けで深夜まで帰って来ないことが多かったのですが、今は、かなり早く帰宅するようになりました」と奥様。
設計は、井上昌彦氏に依頼。オーディオルームを手がけるのは初めてだったが、”面白そうだから”と引き受けてくれたという。ベースはN氏が信頼する、オーディオコンサルタントの草分け的存在の石井伸一郎氏が提唱する”石井式リスニングルーム”理論に則った。
「大切なのは天井高です。おかげで、低音が窮屈でなく余裕のある鳴り方をします。また、床が共振性の低い造りのため、大音量で聴いても低音がそよそよと流れるようにやってきますね」。
N氏と奥様は、ともに学生時代からトランペットを演奏。二人の息子も楽器を演奏するという音楽一家。心酔するウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を聴きながら寛ぐのが、至福の時間だ。